振動の単位
振動の基本的物理量は、変位、速度、加速度、周波数等である。
振動レベル
人が感じる振動の強さを表す指標で、周波数補正(振動感覚補正)した加速度レベルVL[dB]で表す。
振動加速度の単位は、[m/s2]で、基準振動加速度は、10-5m/s2である。
対象振動が正弦波の場合、振動加速度の実効値は、最大振幅の1/√2で求められる。
$\displaystyle VL=20log\frac{a}{a_0} \ [dB] $
$VL$:振動レベル [$dB$]
$a$:振動加速度 [$m/s^2$]
$a_0$:基準振動加速度 [$m/s^2$]
振動感覚いき値
振動感覚いき値(最小値)は、人間が感じる振動の最小値で、地震震度0の限界に相当する振動レベル55dBである。
ガル
ガル[gal]は、CGS単位系における加速度の単位で、地震の分野で使用している。
1gal=1cm/s2=10-2m/s2
時間率レベル
騒音規制法・振動規制法に使われている評価量で、騒音や振動の大きさが不規則かつ大幅に変動するときに時間率レベルで表示する。
時間率レベルとは、あるレベル以上の騒音・振動に対する曝露(ばくろ)時間が観測時間内に占める割合のことをいう。
観測時間が10分で、55dBを超える時間の合計が5分の場合、55dBを50%時間率レベルという。
振動の特徴
振動は、鉛直と水平に分けて評価する。
風、空調機による建物の振動は規則的で変動は小さく、道路交通による振動は不規則で変動が大きい。
道路交通振動に対する振動規制は、昼間より夜間の方が厳しい。
環境振動で対象とする周波数の範囲は、鉛直方向の場合、1~80Hzである。
内装材の振動は、部位により測定場所間で異なることがあるため、多くの点数で測定し平均化するなどの処理が必要となる。
人体と振動
振動の感覚
人体の感じる振動は、振動の方向や周波数、身体の姿勢によって異なる。振幅と同時に振動の方向を明確にしなければならない。
振動の知覚は、内耳の前庭器官と三半規管だけでなく、皮膚や内蔵などの知覚神経末端受容器でも感じる。(交感神経でなはい)
全身振動は鉛直振動と水平振動に分けて評価される。
全身振動の大きさの感覚は、振動継続時間によって異なる。
低周波数域に対して感覚が鋭く、高周波に対して感覚が鈍い。(音と逆)
最も敏感なのは鉛直振動で4~8Hz、水平振動で1~2Hzである。3Hz以下の周波数では水平振動の方が感じやすく、それ以上では鉛直振動の方が感じやすい。
振動による障害
局所振動は工具などによる振動で、問題となる振動数は約8~1000Hzである。健康障害は代謝が低下する冬期に多くみられる。振動数によって症状が異なる。
局所振動による障害として、末梢(まっしょう)神経障害、末梢循環障害で指が白くなるレイノー症候群(白ろう病)がある。
車両(フォークリフトなど)の運転などの全身振動による強い垂直振動では、胃腸の働きの抑制や胃下垂、血圧上昇などを起こす。
車や船などによる低い振動数(1Hz未満)で振幅が大きい振動では、乗り物酔い、動揺病等が発生しやすい。
防振
共振現象があると、建築物内床面の振動レベルが屋外地面上より高くなる場合がある。
床の固有周波数と防振系の固有周波数が近いと、防振効果は低下する。
防振材のゴムやバネで、空気バネは固有振動数を低く取れるので、除振効果のある周波数域が大きくなる利点がある。
防振溝
防振溝は、道路交通振動など建築物外からの振動対策として設けられ、回折減衰効果(音が障害物を回り込む性質を利用して距離を稼ぎ減衰させる)を利用した振動対策の方法である。
溝が深いほど、溝が振動源と近いほど効果が大きい。
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