学校保健安全法
学校における環境条件などを定めている。
所管するのは、私立学校を除き、教育委員会であり文部科学省である。
職務執行者は学校薬剤師である。
目的
この法律は、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする。
学校薬剤師の職務
職務として、学校保健計画・学校安全計画の立案への参与、学校環境衛生基準に定められた各種検査などがある。
健康診断や疾病予防に関するものは、学校薬剤師ではなく学校医の職務である。
検査項目として、温度・湿度・室内空気・採光・照度・換気・騒音レベル・飲料水や水泳プールの水質・ねずみなど害虫やダニアレルゲンの基準などがある。
土壌汚染・落下細菌・運動場の微小粒子状物質の濃度は規定されていない。
労働安全衛生法
労働者の安全と衛生について、作業場の環境基準を定めている。
「事務所衛生基準規則」を規定している。
監督官庁は厚生労働省、行政事務を所管するのは、厚生労働省の出先機関の都道府県労働局である。(労働基準監督署等)
労働基準監督署の実務を行う職員として、労働基準監督官や労働衛生専門官がいる。
目的
この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
規定
国(厚生労働大臣)は、労働災害防止計画を策定しなければならない。
事業者は、業種と規模に応じて安全委員会を設けなければならない。安全委員会の構成委員には、当該事業場の労働者で、事業者が指名した者が含まれなければならない。
事業者は、規模に応じて、産業医を選任しなければならない。
政令で定める指定作業場(有害な業務を行う屋内作業場など)においては、作業環境測定士が作業環境の測定を行い、その結果を記録しておかなければならない。
健康診断
健康診断を実施し、結果を本人・労働基準監督署長(常時50人以上の労働者を使用する事業者)に通知する。(保健所ではない)
一定規模の事業場においては、常時使用する労働者に対し、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
ボイラーの製造許可
ボイラーの製造許可は、所轄の都道府県労働局長がおこなう。
地域保健法
地域保健法は、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された。保健所法を改正したものである。
監督官庁は、厚生労働省である。
厚生労働大臣は、地域保健対策の推進に関する基本的な指針を定めなければならない。
目的
この法律は、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、もつて地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的とする。
保健所の業務
保健所の業務は、多数の者が使用し、または利用する建築物の維持管理について、環境衛生上の相談に応じ、正しい知識の普及及び環境衛生上必要な指導を行うことである。地域保健に関する思想の普及及び、公衆衛生の向上を目的にしている。
業務は、建築物の衛生・食品衛生・人口動態統計・精神保健・薬事に関する事項などである。
該当しない業務は、国民健康保険・労働者の衛生・介護に関するものなどである。
都道府県が設置する保健所は、市町村の求めに応じ、技術的助言を行うことができる。
保健所・市町村保健センターの設置
保健所は、都道府県・政令市や中核市・特別区に設置される。設置数は都道府県が最も多い。
地方公共団体の長は、保健所の設置・廃止に関しては厚生労働大臣に報告が必要だが、所管区域の設定については必要ない。
市町村は、地域保健法により市町村保健センターを設置することができる。
環境衛生に関係する施設に対して立入検査等の監視指導を行う環境衛生監視員は、主に保健所に勤務している。(労働基準監督官ではない)
保健所長は、原則として医師をもって充てる。
環境基本法
政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。(地球環境を保全するものではない)
所管官庁は、環境省である。
この基準は、生物学的研究(疫学調査や経験的数値)を判断に用いている。
目的
この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
公害の定義
公害とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染・水質の汚濁・土壌の汚染・騒音・振動・地盤の沈下・悪臭の典型7公害によって、人の健康又は生活環境に係わる被害が生ずることをいう。
事業者の責務
事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
環境基準
大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音について、環境基準が定められている。
- 大気汚染:環境基準に定められていないのは、二酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒドである。ダイオキシンは「ダイオキシン類対策特別措置法」によって規制されている。
- 水質汚濁:環境基準に定められていないのは、鉄、亜鉛、ホルムアルデヒドである。全シアン(呼吸不能で死ぬ)、アルキル水銀(中枢神経を犯す)、PCB(肝機能障害を起こす)の3項目は公共用水域から検出されてはならない。
- 騒音:環境基準で定められていないのは、高速道路の騒音である。航空機と新幹線の騒音は定められている。
大気汚染防止法
大気汚染に関して、環境基本法おける環境基準の達成を目標にした規制を行う。
所管官庁は、環境省である。
大気の汚染の状況の監視をする。
目的
この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、水銀に関する水俣条約(以下「条約」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。
水質汚濁防止法
公共用水域及び地下水の水質汚濁の防止に関して、環境基本法おける環境基準の達成を目標にした規制を行う。
所管官庁は、環境省である。
水質汚濁の状況の監視を行う。
公共用水域への排出とは河川、湖、海等への排出であって、下水道に排出する場合を含まない。公共下水道に流される水の規制は、下水道法によって行われている。
特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、排水基準を定めている。(都道府県で厳しい基準に上乗せができる)
排水の水質規制を受ける特定施設に該当するのは、旅館業や300床以上の病院の厨房、洗浄・入浴施設で、通常の飲食店の厨房施設では床面積が420m2以上である。
目的
この法律は、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。
悪臭防止法
⼯場その他の事業場の事業活動に伴って発⽣する悪臭について必要な規制を行う。
所管官庁は、環境省である。
特定悪臭物質とは、硫化水素やアセトアルデヒド、メチルなど22物質で、メタンや二酸化硫黄、ホルムアルデヒドは含まれない。
複合臭の測定に対応する規制基準は、三点比較式臭袋法による臭気濃度(その臭気を感知できなくなるまでの希釈の倍数で単位はない)を元に算出する臭気指数(人間の感覚に近いもの)で決められる。
目的
この法律は、工場その他の事業場における事業活動に伴つて発生する悪臭について必要な規制を行い、その他悪臭防止対策を推進することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
商業施設の法令
生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律
生活衛生関係営業(サービス業・飲食業・販売業)を営む営業者に対し、経営の健全化、衛生水準の維持向上などを図ることを目的とする。
所管官庁は、厚生労働省である。
都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可(届出ではない)が必要な施設は、飲食店、興行場、旅館、公衆浴場である。
施設の営業に当たって、許可ではなく届出でよいものは、多数の者が使用しない美容所、クリーニング店などである。
興行場法
興行場とは、映画・演劇・音楽・スポーツ・演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設をいう。
興行場法で規定があるのは、換気、照明、防湿、清潔その他入場者の衛生である。
基準は都道府県の条例である。
旅館業法
旅館業法で規定があるのは、換気、採光、照明、防湿、清潔その他宿泊客の衛生である。
基準は都道府県の条例である。
公衆浴場法
公衆浴場法で規定があるのは、換気、採光、照明、保温、清潔その他入浴者の衛生及び風紀である。
基準は都道府県の条例である。
食品衛生法
飲食による健康被害の発生を防止するための法律。
令和3年に、食品等事業者は、HACCPに沿った衛生管理の実施を求めるよう改正された。
HACCPとは、食品製造に関して原材料の受入れから最終製品の出荷までの各段階におけるリスク分析に基づき、重点管理点を定めて連続的に監視する安全性確保のための衛生管理手法である。
HACCPに沿った衛生管理が制度化されることに伴い、食品等事業者の業種により営業許可と届出制度に見直しが行われた。
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