省エネ法
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」
化石エネルギーだけでなく非化石エネルギーも含めたエネルギー利用の合理化、非化石エネルギーへの移行、電力需要の最適化を求めるものである。
一定規模以上の(原油換算1500kL/年以上使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等について定期的に報告することを義務付け、省エネ取組の見直しや計画の策定等を行うことを求めている。
電気需要の平準化
省エネ法に基づく電気使用輸送事業者に対する経済産業省の指針では、電気需要の平準化が求められている。
電力需要平準化時間帯として、7月~9月(夏季)と12月~3月(冬季)の8時~22時を定め、この時間帯の電気需要を低減するが求められる。
通常のエネルギー消費原単位に対して、電力需要平準化評価原単位は、上記の時間帯の電気使用量を削減した場合、他の時間帯の1.3倍を削減したものとして算出される。
デマンド監視による電気使用量の把握を行う必要がある。
措置を講じるにあたっては、エネルギーの使用の合理化を著しく妨げることのないように留意するよう規定されている。
受電端における力率は95%以上とすることを基準として求めている。
エネルギー管理
オフィスビルのエネルギーは、空調設備が40%、照明・コンセントが40%を占める。
エネルギー管理の手法
ビルエネルギー管理システム(BEMS)
ビルのエネルギー使用状況を監視・管理して、最適化を行うビルエネルギー管理システムのこと。
管理対象によりHEMS(住宅)、MEMS(集合住宅)、BEMS(商用ビル)、FEMS(工場)、CEMS(地域全体)という名前で呼んでいる。
ESCO事業
ビルオーナーに対して省エネに関する包括的なエネルギー総合サービスをおこなう事業。
ESCOの契約方式として、ギャランティード・セイビング方式と、シェアード・セービング方式がある。
- ギャランティード・セイビング方式:顧客が自己投資により設備機器を導入する方式。
- シェアード・セービング方式:ESCO事業者が資金を用意して設備機器を導入する方式。
エネルギー管理の指標
年間熱負荷係数(PAL)
ペリメータゾーンの断熱性能を評価する。
PAL=ペリメータの年間熱負荷[MJ]/ペリメータの床面積[m2]。
値が小さいほど効率の良い建物である。
エネルギー消費係数(CEC)
空気調和設備+換気設備+照明設備+給湯設備+エレベーターの5種類の省エネ性能を評価する。
CEC=年間エネルギー消費量[MJ]/年間仮想エネルギー消費量[MJ]
エネルギー消費効率(COP)
機器のエネルギー成績係数。「成績係数」参照。
COP=能力[kW]/消費電力[kW]
通年エネルギー消費効率(APF)
通年のエネルギー成績係数。
APF=1年間で必要な冷暖房能力[Wh]/期間消費電力量[Wh]
エアコンの効率の判断基準で使用され、3.6~6.0の範囲である。
期間成績係数(IPLV)
年間を通じての負荷や温度の変動を反映させるため、負荷の異なる4点(100%、75%、50%、25%)のCOPと運転時間から成績係数を示す指標。
エネルギー原単位
単位量の製品や額を生産するのに必要なエネルギー消費量(電力・熱)の総量のこと。電力の場合は電力原単位と呼ぶ。
エネルギー効率を表す値で、この値が小さいほど、生産効率が高く省エネルギー化されていることを示す。
省エネルギー化
トップランナー制度
省エネルギー性能の向上を促すための目標基準を満たすことを、製造事業者と輸入事業者に対して求める日本固有の制度。
エネルギーを多く使用する機器32品目ごとに、目標基準が設定されている。
変圧器
変圧器のエネルギー消費効率は全損失(W)が指標となっており、以下の式で求める。
エネルギー消費効率=無負荷損+(基準負荷率)2×定格時の負荷損
基準負荷率は500kVA以下で40%、500kVA超では50%である。
無負荷損は無負荷試験、定格時の負荷損は短絡試験で求める。
電動機
三相かご形誘導電動機で電圧1000V以下の出力が0.75kW~375kWのものが対象となり、2015年4月に目標基準値を達成することになった。
この目標基準値は、世界的規格であるIEC規格の効率クラスIE3に相当する。
効率クラスとして、IE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)、IE4(スーパープレミアム効率)、IE5(ウルトラ効率)に区分されている。
二次エネルギー
一次エネルギー(石油、石炭、原子力など)を変換や加工して得られるエネルギーのことで、発電などで得られる電気などに代表される。
太陽熱の利用
水式ソーラーシステム
集熱器(ソーラーパネル)と蓄熱槽の間に不凍液などを循環させて、蓄熱槽の湯を給湯や床暖房に利用する。
ソーラーウォール
外壁にソーラーウォールパネルを設置し、パネルで温められた空気が小孔から室内に送られる。
集熱パネル
屋根に集熱パネルを取り付け、高温の空気を送風機で床下に送り循環させる。
ダイレクトゲイン
太陽からの日射熱を、コンクリート・タイル・レンガなどの蓄熱体に蓄熱させて、夜間の暖房に利用する。
トロンブウォール
窓ガラスの内側に黒に塗装したコンクリートなどを設けて蓄熱する。
付設温室
温室(サンルーム)を設置して熱を集めて取り込む。
エアサイクル
外壁を二重構造にして空気層を作り、床から天井へ蓄冷や蓄熱を自然循環させる。
ダブルスキン
外壁を二重のガラスで覆って、温室空間を作り、外気を自然循環させる。
太陽光の利用
直射日光は天気によって大きく変動するため、昼光を照明として利用する場合は、天空光(直射日光以外の光)のみを利用する。
ライトシェルフ
部屋の奥まで光を導くよう直射日光を反射させる庇(ひさし)である。
ライトコート
採光が届きにくい建物の内部に吹き抜けの中庭を設けて、採光と通風を取り込む。
サンクンガーデン
半地下の庭。
交通緩和や地下室での採光、高層ビルのビル風を和らげる効果がある。
オーニング
窓に取り付ける日除けの一種。
ブラインド
内付けブラインドの日射遮蔽効果は、外付けブラインドに比べて小さく、50%程度となる。
地熱の利用
クールピット
地下に空間を設けて、夏は冷たい冷気、冬は温まった外気を取り込む。
クールチューブ
地中に配管を埋設して、外気を通して地中の熱を取り込む。
地中熱ヒートポンプ
室外機の熱交換部分に、U字形のパイプを地中に埋設して、パイプ内の循環液で冷媒との熱交換を行って、ヒートポンプの効率を上げるシステム。
外気による熱交換のような季節の温度変化が少ないので、負荷が軽減し省エネになる。
深夜電力の利用
エコキュート
夜間の割安な電力を使用して、ヒートポンプでお湯を作り貯めておき、給湯や床暖房に利用するシステム。
設備の省エネルギー対策
空調設備の省エネルギー対策
夏期に、室内の冷房設定温度を上昇させる。
ヒートポンプ屋外機の熱交換器に散水する。
蓄熱槽を利用し、蓄熱槽の蓄熱温度を低下させる。
熱交換器の洗浄、エアフィルタの清掃、冷却塔のスケール防止など機器効率の低下を防ぐ。
冷凍機の冷却水入口温度を低下させる、冷水出口温度を上昇させて、冷凍機の負荷を軽減する。
冬期に、ボイラの温水出口温度を低下させて、ボイラーの負荷を軽減する。
給湯設備の省エネルギー対策
エネルギーと水の節約を図るためには、湯と水を別々の水栓から出さずに混合水栓を使用する。
配管経路の短縮、配管の断熱等に配慮し、放熱損失を低減した適切な配管とする。
エネルギー利用効率の高い熱源機器を設置する。
適切な給湯設備の制御方式を採用し、温度を管理する。
器具ごとに定流量弁を設置する。
加熱装置の加熱能力と、貯湯能力の関係は、一方を大きくすれば他方を小さくできる。
照明設備の省エネルギー対策
作業面を明るくするタスク照明と、作業面の周辺環境を照らすアンビエント照明で分けて、タスク・アンビエント照明とする。必要な照明は確保して、全体の照度は下げて省エネを実現する。
加熱設備の省エネルギー対策
高電力化による加熱時間の短縮。
最適な発熱体の採用。
熱伝達率の小さい炉壁を使用して熱損失を少なくする。
比熱や密度の小さい炉壁を使用して蓄熱損失を低減する。セラミックファイバーなどが使用されている。
開口部を小さくして、放射・対流による損失を防ぐ。
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