建築物環境衛生管理基準(建築物衛生法)
特定建築物を対象とした基準。
空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定めている。
建築物環境衛生管理基準は、最低許容限度の基準や、必要な構造設備を定めるものではない。
騒音や振動、照度については規定がない。また人為的に制御可能なものである。
平成14年に、大幅な改正及び特定建築物の範囲の見直しが行われた。
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空気環境の調整
基準量
- 浮遊粉じん:0.15mg/m3以下 <2回測定の平均値>
- 一酸化炭素:6ppm以下 <2回測定の平均値>(令和4年4月1日に法改正され、特例も廃止)
(旧基準 一酸化炭素:10ppm以下 特例:大気中における一酸化炭素の含有率が10ppm超えの場合は20ppm) - 二酸化炭素:1000ppm以下 <2回測定の平均値>
- 温度:18~28℃(令和4年4月1日に法改正された)
(旧基準 温度:17~28℃)
居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。 - 湿度:40~70%
- 気流:0.5m/s以下
- ホルムアルデヒド:0.1mg/m3以下(水質基準では0.08mg/L以下)(トルエンやキシレンは不要)
基準量の不適合率が高いものは、二酸化炭素と湿度で、浮遊粉じんは減少した。
機械換気設備を設けている場合の空気環境の基準では、上記から温度と湿度を除く5項目となる。
測定方法
浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、湿度、気流は、2カ月以内に1回測定する。
測定時間は、通常の使用時間中(始業後~中間時・中間時~終業前の二時点)に行う。
測定場所は、各階ごとに居室の中央部で床上75cm~150cmの地点で行う。
判定方法は、浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素は、1日の使用時間中の平均値だが、実務上は使用時間中の適切な二時点における測定の平均値によって判定する。その他は二時点の両方が基準値内にあることを判定する。
一酸化炭素、二酸化炭素の測定は、検知管方式の検定器を使用する。
温度・湿度の測定器は、0.5度目盛りの温度計・乾湿球湿度計を使用する。
気流の測定は、0.2メートル毎秒以上の気流を測定することのできる風速計を使用する。
ホルムアルデヒドは、新築や修繕から使用開始後の6月~9月に1回実施する。(夏に気化しやすいため)
ホルムアルデヒドの測定結果が基準を超えた場合は、空調・換気設備を調整するなど軽減措置を実施後、翌年の測定期間中に1回、効果を確認しなければならない。
測定に用いる測定器の感度の較正は、厚生労働大臣に登録を受けた者が1年以内ごとにおこなう。
冷却塔等の空調設備
冷却塔・加湿装置の水は、水道法第4条に規定する水質基準に適合した水を使用する。
冷却塔・冷却水・加湿装置・空気調和設備内の排水受けの点検は、使用開始時及び1カ月以内ごとに1回行う。
冷却塔・冷却水の水管・加湿装置清掃は1年以内ごとに1回おこなう。
給水の管理
飲用目的だけでなく、炊事用など人の生活の用に供する水も、水道法第4条で定める水質基準に適合する水を供給することが必要である。
飲料水に井戸水等自己水源を利用している場合にも、水道法の水質基準が適用される。
貯水槽・貯湯槽の清掃は、1年以内ごとに1回、定期に行う。
水質検査
給水栓末端の水の遊離残留塩素が、0.1ppm以上(結合残留塩素:0.4ppm以上)あることを7日以内ごとに1回検査する。(水の場合ppm=mg/Lと考えてよい)
残留塩素の測定は、一般にDPDを発色試薬とした測定法により行う。
水道事業者が供給する水(水道水)を直結給水により、特定建築物内に飲料水として供給する場合、定期の水質検査を行う必要はない。
水質検査の結果、病原生物などが水質基準を超えて水に含まれ、人の健康を害するおそれがある場合は、直ちに給水停止措置をとり、その後関係者に周知する。
水の色、濁り、臭い、味はその都度確認し、異常が認められた場合は水質基準に関する省令に基づく必要な項目について検査する。
検査項目は水道水と、地下水・雑用水では多少項目が異なるが、水質検査は必要である。
6カ月ごとの検査(飲料水)
6カ月以内に1回、以下の省略不可検査項目11項目+重金属等5項目の16項目について検査する。
重金属等5項目(※)については、前回適合値であれば2回目は省略可能である。
- 一般細菌:100個/mL以下
- 大腸菌:検出されないこと
- 鉛及びその化合物:0.01mg/L以下(※)
- 亜硝酸態窒素:0.04mg/L以下
- 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素:10mg/L以下
- 亜鉛及びその化合物:1.0mg/L以下(※)
- 鉄及びその化合物:0.3mg/L以下(※)
- 銅及びその化合物:1.0mg/L以下(※)
- 塩化物イオン:200mg/L以下
- 蒸発残留物:500mg/L以下(※)
- 有機物(全有機炭素(TOC)の量):3mg/L以下
- pH値:5.8~8.6(酸性<7<アルカリ性)
- 味:異常でないこと
- 臭気:異常でないこと
- 色度:5度以下
- 濁度:2度以下
1年ごとの検査(飲料水)
6/1~9/30の期間に年1回、以下の消毒副生成物12項目について検査する。
- シアン化物イオン及び塩化シアン:0.01mg/L以下
- 塩素酸:0.6mg/L以下
- クロロ酢酸:0.02mg/L以下
- クロロホルム:0.06mg/L以下
- ジクロロ酢酸:0.03mg/L以下
- ジプロモクロロメタン:0.1mg/L以下
- 臭素酸:0.01mg/L以下
- 総トリハロメタン:0.1mg/L以下
- トリクロロ酢酸:0.03mg/L以下
- ブロモジクロロメタン:0.03mg/L以下
- ブロモホルム:0.09mg/L以下
- ホルムアルデヒド:0.08mg/L以下
雑用水の管理
散水、修景又は清掃の用に供する水にあっては、し尿を含む水を原水として用いないこと。(水洗便所では使用してよい)
給水栓の水の遊離残留塩素が、0.1ppm以上(結合残留塩素:0.4ppm以上)あることを7日以内ごとに1回検査する。(飲料水と同じ)
散水、修景又は清掃の用に供する雑用水は、pH値、臭気、外観を7日以内ごとに1回、大腸菌、濁度を2カ月以内に1回測定する。
- pH値:5.8~8.6(飲料水と同じ)
- 臭気:異常でないこと(飲料水と同じ)
- 外観:ほとんど無色透明であること
- 大腸菌:検出されないこと(飲料水と同じ)
- 濁度:2度以下(飲料水と同じ)(但し、水洗便所の用に供する雑用水は、濁度の規定がない)
排水の管理
排水設備の清掃は、6カ月以内に1回行う。
清掃
掃除を日常に行う。
大掃除(日常的に清掃を行わない箇所の清掃)を6カ月以内に1回行う。
ねずみ等の防除
ねずみその他の厚生労働省令で定める動物とは、昆虫その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物をいう。
ねずみ等の状況調査を6カ月以内に1回行う。
発生しやすい場所では、2カ月以内ごとに発生状況調査を実施する。
衛生害虫の防除を行う場合は、医薬品又は医薬部外品として承認された薬剤を使用しなければならない。
事務所衛生基準規則 (労働安全衛生法)
事務所のある建物に対して適用される基準。(特定建築物の事務所は両方の基準に適用する必要がある)
空気環境は、2カ月以内ごとに1回実施し、結果は3年間保存する。
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基準は建築物環境衛生管理基準に準じている。異なる点や一部抜粋したものは以下の通り。
- 温度:10℃以下の場合は、暖房等の措置を行う。冷房時は外気温との差を7℃以内とする。
- 気積:床面から4m以上を除き、一人につき10m3以上。
- 窓:床面積の1/20以上を開放するか、または換気設備を設ける。
- 濃度:換気ができる場所では、一酸化炭素は50ppm以下、二酸化炭素は5000ppm以下とする。(建築物環境衛生管理基準では、一酸化炭素は6ppm以下、二酸化炭素は1000ppm以下で異なる)
- 照明:一般的な事務作業は300lx以上、付随的な事務作業は150lx以上。(令和4年12月1日に法改正された)点検は6カ月以内に1回行う。
- 便所:便所は、男性用と女性用に区別する。
男性用大便所の数は、男性労働者60人以内ごとに1個以上。
男性用小便所の数は、男性労働者30人以内ごとに1個以上。
女性用便所の数は、女性労働者20人以内ごとに1個以上。
男女を区別しない便所(独立個室型の便所)は、その数は男性用、女性用の便所の設置基準に反映させる。
常時働く従業員が10名以内の場合は、独立個室型の便所を設けることで足りることとする。 - 燃焼器具:毎日、異常の有無を点検する。
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