感染症の分類と制限
感染症法では、症状の重さや病原体の感染力などから、感染症を一類~五類・指定感染症・新感染症・新型インフルエンザ等感染症の8種類に分類している。
医師が診断後、都道府県知事に届け出なければならない。一類~四類、五類の侵襲性髄膜炎菌感染症・風しん・麻しんは直ちに、その他の五類は7日以内である。
感染症の分類により、自治体が実施できる措置が決められている。
- 積極的疫学調査:一類~五類
- 健康診断受診の勧告:一類~三類
- 就業制限:一類~三類
- 死体の移動制限:一類~三類
- 入院勧告:一類~二類
- 建物への立ち入り制限・封鎖、交通制限:一類
一類感染症
ペスト
細菌が病原体で、ノミが媒介する。
ラッサ熱
ウイルスが病原体で、ネズミが媒介する。
エボラ出血熱
ウイルスが病原体で、媒介は不明である。
天然痘
ウイルスが病原体で、飛沫感染する。
二類感染症
ポリオ(急性灰白髄炎)
ウイルスが病原体で、ゴキブリや水を介して感染する。
結核
細菌が病原体で、飛沫感染する。
我が国でまだ制圧されていない。
ジフテリア
細菌が病原体で、飛沫感染する。
三類感染症
腸管出血性大腸菌感染症(O157)
細菌(大腸菌)が病原体で、イエバエを介して感染する。
コレラ
細菌が病原体で、ハエや水を介して感染する。
赤痢
細菌が病原体で、ハエや水を介して感染する。
腸チフス
細菌が病原体で、ハエや水を介して感染する。
パラチフス
細菌が病原体で、ハエや水を介して感染する。
四類感染症
レジオネラ症
冷却塔の水などにいる細菌が病原体で、飛沫感染する肺炎である。
病原体は、自然界の土壌や淡水中等に生息し、一般に20~50℃で繁殖する。
感染の起こりやすさには、人の個体差や体調差が影響すると考えられる。
クリプトスポリジウム症
原虫が病原体で、水や糞便を介して感染する。
感染すると、消化管で増殖し、2~5日後に下痢や腹痛等の症状が表れる。2~6カ月間感染力を維持する。
塩素の耐性があるため、水道水の塩素消毒では不十分である。ろ過設備・紫外線処理設備で対策する。
汚染を判断する上で指標菌の検査をおこなう必要がある。
発疹チフス
リケッチケアが病原体で、コロモジラミが媒介する。
つつが虫病
リケッチケアが病原体で、つつが虫(ダニ)が媒介する。
日本紅斑熱
リケッチアが病原体で、マダニが媒介する。
マラリア
原虫が病原体で、ハマダラカが媒介する。
日本脳炎
ウイルスが病原体で、コダカアカイエカ(アカイエカではない)が媒介する。
デング熱
ウイルスが病原体で、ヒトスジシマカ・ネッタイシマカが媒介する。
チクングニア熱
ウイルスが病原体で、ヒトスジシマカ・ネッタイシマカが媒介する。
ジカウイルス感染症
ウイルスが病原体で、ヒトスジシマカ・ネッタイシマカが媒介する。
ウエストナイル熱
ウイルスが病原体で、アカイエカなど多種類の蚊が媒介する。
A型肝炎
ウイルスが病原体で、水を介して感染する。
レプトスピラ症(ワイル病)
スピロヘータ(細菌)が病原体で、水を介して感染する。ねずみが媒介する。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ウイルスが病原体で、マダニ類が媒介する。
鳥インフルエンザ
インフルエンザウイルスが病原体で、感染した鳥の体液・排泄物などを介して感染する。
ライム病
スピロヘータ(細菌)が病原体で、マダニ類が媒介する。
五類感染症
後天性免疫不全症候群(エイズ)
ウイルスが病原体で、直接接触感染である。
インフルエンザ
ウイルスが病原体で、飛沫感染である。
麻しん
ウイルスが病原体で、飛沫感染である。
風しん
ウイルスが病原体で、飛沫感染である。
梅毒
スピロヘータ(細菌)が病原体で、接触感染である。
カンジタ症
真菌が病原体で、直接接触感染である。
ジアルジア症
原虫が病原体で、水や接触で感染する。
塩素消毒に耐性がある。
新型インフルエンザ等感染症
インフルエンザで、国民が免疫を獲得していないため、国民の健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの。
政令によって二類相当の制限の実施を定めることが可能である。
「新型コロナウイルス感染症」はこれに位置づけされていたが、現在は五類に分類された。
その他の感染症
水系感染症
汚染された水に触れたり飲んだりした人(年齢や職業に関係なく)に広く感染する感染症をいう。
一般に致死率は低く、軽症例が多い。
一般に潜伏期間が長い。
初発患者の発生から数日で爆発的に患者が増える。季節を限定しない。
一般に患者の発生と給水範囲は一致し、水の汚染が証明又は確定されることが多い。
人獣共通感染症
動物からヒトへ、ヒトから動物へ伝播可能な感染症をいう。
ノロウイルス
ウィルスが病原体で、経口でヒトからヒトへ感染する。
嘔吐、下痢、発熱を伴う食中毒の原因となる。
主に冬季を中心に発生する。
潜伏期間は1~2日間程度である。
感染力が強いが、感染しても発症しない場合がある。
水系感染症である。
白癬症(はくせんしょう)
いわゆる水虫で、真菌が病原体で、直接接触により感染する。
水系感染症である。
アニサキス症
アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒を引き起こす。
流行性角結膜炎
ウイルスが病原体で、プールを介して伝染する。
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニが皮膚に寄生しておこる皮膚疾患である。
直接接触により感染する。
Ver.1.2.2