下水道法
目的
この法律は、流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道、流域下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準値を定めて、下水道の整備を図り、もって都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資することを目的とする。
下水道の役割の一つに、浸水の防除と、水循環の創出の寄与がある。
下水道の種類
下水道は、流域下水道、公共下水道、都市下水路に分けられる。
- 流域下水道:二つ以上の市町村の区域にわたる広域的な下水道。都道府県が管理する。
- 公共下水道:主として市街化区域における下水を排除し、又は処理する。市町村が管理する。
- 都市下水路: 雨水を排除し河川などに排水する下水路。
責務
所管は、国土交通省と環境省(水質に関するもの)である。
下水道行政は国土交通省、終末処理場の維持管理は環境省、下水道へ流入させる排水設備は土地の所有者、使用者又は占有者が責任を持つ。
国土交通大臣は、緊急の必要があると認めるときは、公共下水道等の工事又は維持管理に関して必要な指示をすることができる。(終末処理場の維持管理に関しては、環境大臣である)
都道府県は、下水道の整備に関する総合的な基本計画を定めなければならない。
公共下水道の構造は、政令及び地方公共団体が条例で定める技術上の基準に適合しなければならない。
公共下水道管理者は、公共下水道を設置しようとするときは、あらかじめ、政令で定める事業計画を定めなければならない。
公共下水道管理者は、公共下水道などに著しく悪影響を及ぼすおそれのある下水を継続して排除して公共下水道を使用する者に対し、除害施設の設置などの必要な措置をしなければならない旨を定めることができる。
下水の種類
下水とは、生活若しくは事業(耕作の事業を除く)に起因し、若しくは付随する廃水又は雨水をいう。農業廃水は含まない。
- 汚水:生活や事業の廃水の事で、し尿を含むもの。雨水とは区別されている。
- 雑排水:流し台、空調などからの排水で、汚水以外のもの。
- 雨水・湧水:屋根および、ベランダ等からの雨水。
- 特殊排水:下水道に直接排水できない有害・有毒・危険などの性質を有するもの。
下水道の方式
下水道施設は、排水管渠(かんきょ)、処理施設及びポンプ施設等から構成されている。
下水道に流す排水は40℃未満であること。基準値以上の場合には、除害施設を設置する必要がある。
水洗化率は人口比約93%で、このうち、公共下水道によるものが約71%となっている。近年の水洗化率は、微増傾向にある。
水洗化の普及は、公共下水道と浄化槽によって担われている。
方式による分類
公共下水道の有無や方式によって分類される。(特殊排水を除く)
排水方式
下水の排除方式には、合流式と分流式がある。
敷地内排水と公共下水道で、汚水・雑排水・雨水をどのような系統で排出するかで分類する。
- 公共下水道合流式:汚水、雑排水、雨水をすべて1系統で排出する。
- 公共下水道分流式:汚水+雑排水、雨水の2系統で排出する。
- 敷地内排水合流式:汚水+雑排水、雨水の2系統で排出する。
- 敷地内排水分流式:汚水、雑排水、雨水を3系統で排水する。
処理方式
- 単独処理:汚水のみ処理し、その他の排水はそのまま河川などに放流する。
- 合弁処理:汚水と雑排水は処理し、雨水はそのまま河川などに放流する。
終末処理場
終末処理場とは、下水を最終的に処理して河川等に放流するために、下水道の施設として設けられる処理施設及びこれを補完する施設をいう。
基本的な排水処理の流れは浄化槽と変わらない。
し尿処理施設
都市のし尿は、水洗化して下水に排出し、終末処理場で処理する。
下水道のない場合は、浄化槽法に基づく浄化槽や、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づくコミュニティ・プラント等で処理する。
し尿及び浄化槽汚泥の年間処理計画量のうち、約90%が、し尿処理施設で処理されている。
汚泥再生処理センターでは、し尿のほかに生ゴミを併せて処理できる。
コミュニティ・プラントでは、水洗便所のし尿と生活雑用水を併せて処理する。(くみ取りし尿の処理施設ではない)
水質汚染物質
硝酸態窒素
水中の硝酸イオン及び硝酸塩に含まれている窒素のこと。
亜硝酸塩は、メトヘモグロビン血症の原因となる。
水銀
水銀は、一般に有機水銀と無機水銀に分けられる。
生物濃縮を起こすことが知られている。
有機水銀の一つであるメチル水銀(アルキル水銀)は、水俣病の原因となった。
水銀の健康被害として、口内炎や腎障害、小脳性失調、中枢神経障害などがある。
水道法に基づく水質基準項目の一つで、水質汚濁防止法に基づく排水基準の項目に含まれる。
鉛及びその化合物
鉛及びその化合物は、健康被害として神経系の障害や貧血等の中毒症状を起こす。
ヒ素
ヒ素は、その結合形によって性質が異なり、3価の化合物の方が5価の化合物よりも毒性が強い。
ヒ素で汚染された地下水の飲用による慢性ヒ素中毒がおこる。
ヒ素の慢性曝露により、皮膚の色素沈着や角化を起こす。
健康被害として発がん性(ボーエン病)が認められる。
水道法に基づく水質基準項目の一つで、環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準項目に含まれる。
カドミウム
合金、塗料、電池等の用途に用いられる。
カドミウムを腎臓に過剰に蓄積すると、尿細管に障害が起こり、蛋白尿などの症状を示す。
富山県神通川流域の一般環境汚染により、イタイイタイ病の原因となった。
水道法に基づく水質基準項目の一つで、環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準項目、水質汚濁防止法に基づく排水基準の項目に含まれる。
ベンゼン
溶剤、抽出剤として使用される。
健康被害として発がん性が認められる。再生不良性貧血を起こす。
Ver.1.2.0