給水設備

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給水量と最高水圧

設計給水量

  • 事務所60~100L/(人・日)、節水器具使用時で40~60L/(人・日)
  • デパート15~30L/(m2・日)
  • ホテル350~450L/(床・日)
  • 病院:1500~3500L/(床・日)
  • 学校70~100L/(人・日)

上限給水圧力

最高水圧は騒音防止の観点で制限される。

  • 事務所0.5MPa
  • デパート:0.5MPa
  • ホテル、高層集合住宅0.3MPa
  • 病院:0.3MPa

ゾーニング

高層建築物では、給水を1系統で行うと、下層階において給水圧力が過大になる。
そのため中間水槽や減圧弁を用いて上下の系統分けを行う。

給水方式

給水方式は、水道直結方式受水槽方式に大別される。
水道事業者が供給する水(水道水)を貯水槽に貯留して供給する場合、貯水槽以降の水の管理責任者は、特定建築物の維持管理権原者である。

高置水槽方式

水道の水をいったん受水槽に貯水した後、揚水ポンプで高置水槽に揚水して貯水し、重力(水頭圧)により各階に給水する方式。
機構が簡単で、水圧水量が安定している。 断水時にも水槽の水を利用できる。
上階では水圧が低くなり、高層ビルの下階では水圧が高くなるので、加圧ポンプや減圧弁が設置されるケースもある。
水槽に貯水するため、他の方式に比べて水質汚染の可能性が高い方式である。
揚水ポンプの起動・停止は、高置水槽の水位で行う。受水槽には定水位弁停止よりも低い水位で揚水ポンプの空転防止装置がある。
揚水管は、高置水槽に向かって上がり勾配とする。
揚水管は、水柱分離によるウォータハンマ防止のため、屋上での横引きを短くする。屋上の横引き配管ではポンプ停止時に、ポンプで押し出された水と、重力で下に逆流する水が配管内で水柱分離を起こし負圧が発生してしまう。従って横引きを長くする場合は、屋上に上がる前におこなう。

圧力水槽方式

水道管と建物の間に受水槽を設け、貯留した水をポンプで圧力水槽におくり、圧力水槽内の空気を圧縮・加圧し、その圧力によって給水する方式。
水が使用され圧力が下がると、圧力スイッチによって自動的に加圧ポンプで圧力を確保する。
ポンプ起動時と停止時の水圧の変動が大きい。
隔膜式(プラダ)以外のものは、空気が水に溶けるため、空気の補給が必要となる。

ポンプ直送方式

水道管と建物の間に受水槽を設け、貯留した水を直送ポンプで直接給水する方式。
ポンプの制御には、推定末端圧力一定制御方式と、吐出圧力一定制御方式がある。

  • 推定末端圧力一定制御方式:水量の変化に関わらず、管端圧力が一定になるように制御する方式。
                 インバータ制御によって流量調整するものが多い。
  • 吐出圧力一定制御方式:最大流量の時に、末端で必要な水圧が確保されるように制御する方式。
               減圧弁によって流量調整するものが多い。

ポンプ本体・圧力タンク・制御装置などが一体となった加圧給水ポンプユニットが使用される。自動交互運転方式(ポンプ2台を交互に運転する)と並列交互運転方式(ポンプ1台で水量が足りない場合に2台同時に運転する)がある。
流量制御はポンプの台数、ポンプの回転数で行う。インバータ制御では、周波数を変えることでポンプの回転数を変化させている。
制御が複雑なのでポンプ故障時の対策が必要である。
ポンプを頻繁に使用するのでエネルギー消費量は多い。
ポンプの停止時や性能低下時などに、重力に負けて、上方の階の方が給水管内は負圧になりやすい。
小流量時のポンプの起動・停止の頻度を少なくするため、小型圧力水槽を設ける例がある。
一般に上向き配管方式が採用される。

水道直結方式

受水槽を使用せず、直接給水各所に給水する方式で、直結直圧方式と直結増圧方式がある。
水槽を使用しないので、水質汚染の可能性が少ない
ボイラーや貯湯槽には直接給水が許されていないので、ボールタップなどを設置する。

直結直圧方式

公共水道の配水管の圧力をそのまま利用して給水する。
揚水できる高さは配水管の水圧によって決まり、3階程度までである。
ポンプを使用しないので停電時でも給水でき、経済的な方式である。

直結増圧方式

引込み管に増圧ポンプを設けて水圧を高くし、中層建築物に適用できるようにした方式。
ポンプの制御には、推定末端圧力一定制御方式と、吐出圧力一定制御方式がある。
量水計と増圧ポンプの間に逆止弁をつけて逆流を防止する。
ピーク時の配水管の水圧に影響が出ないよう、水道を敷地内に引き込む引込管の引込み管径が制限される。

給水配管の構成

給水配管の方式

下向き配管方式

最上階で主管を形成し、先下がり配管で各階へ給水する。
太い給水主管を下の階まで下げる必要はない。
高置水槽方式などで使用する。

上向き配管方式

最下階で給水主管を展開し、各枝管を先上がりの配管で各階へ給水する。
上向き配管方式の給水配管は、1/300程度のこう配で、上りこう配とする。
主管に故障がおこると全系統が停止する。
ポンプ直送方式などで使用する。

枝管への分岐

給水配管の横主管から枝管を分岐する場合、管内の空気を上へ逃がす方向に分岐する。
主管の方向に沿った形で分岐して、上方への枝管は上取りとし、下方への枝管は下取りとする。
ちゅう房の給水配管では、防水層の貫通を避ける。

一過式配管

水が通り過ぎるだけで循環しない配管をいう。

配管の選定

給水用鋳鉄管の最小管径

給水用鋳鉄管の最小管径は75mmである。(排水用は50mmである)

給水配管内の流速

給水配管内の流速は0.9~1.2m/sで、最大2.0m/s以下となるように管径を選定する。

弁の設置

空気抜き弁(吸排気弁)

給水管内にたまった空気を排出する。
給水管内が負圧になった場合の、給水先からの逆流防止のために設ける。

止水弁

主管からの分岐各系統の起点機器との接続部等に設置される。
給水の立て主管から各階への分岐管には、最初に止水弁を設ける。
仕切弁が多く使用される。
近傍に点検口を設け、系統の名称札を設ける。
機器の前後に設置する場合は、容易に取り外しできるようフランジ型で取りつける。

量水計

建築物の給水量を計測する水道メーター。

パルス式

パルス信号の方式と、1パルスのm3量で規定される。
パルス信号を積算して水量を遠隔で計測する。

受水槽(貯水槽)

受水槽の材質

耐食性及び耐久性のある材質のものを用いる。

木製

耐水性や耐震性に優れる。
断熱性に優れているため結露対策が不要である。
耐用年数が長い。
容量の大きな貯水槽に用いられる。
形状が円形又は楕円形に限られる。

FRP製

FRPは、ガラス繊維で補強したプラスチックで、耐食性に優れる。
断熱性がよく、結露が少ない。
紫外線に弱い。槽内照度が100lx以上になると、光合成により藻類が増殖しやすい。水槽照度率(水槽外照度に対する水槽内照度の割合)を0.1%以下とする。
機械的強度が低いため耐震補強を必要とする

ステンレス鋼板製

機械的強度が大きい。
表面がきれいで汚れも付きにくい。
液層部は耐食性を有している一方で、塩素ガスに弱いので、気層部腐食対策が必要である。

鋼板製

鋼板一体型で、鉄製の槽の内外面にエポキシ樹脂を焼き付けコーディングしたもの。
強度が強く耐震性に優れる。
防錆処理被膜を毎年点検する必要がある。

受水槽の容量

受水槽方式の受水槽の有効容量は、一般に1日最大使用水量の1/2とする。
水の使用が極端に減少する期間がある建築物の受水槽では、少量貯水用の水位制御電極を併設し、使用水量の状態に合わせて水位設定を切り替えて使用する。

受水槽の設置

屋内に設置する受水槽の天井や壁は、建築物の構造体と兼用してはならない。
六面点検が可能なように床上に独立して設置する。上部で100cm以上、周囲や下部は60cm以上の点検スペースを設ける。
原則として受水槽上部に設置できるのは飲料水の配管だけである。
受水槽は、搬送動力低減としてなるべく高層に設置するほうがよい。
受水槽を独立した水槽室に設置する場合は、出入口に施錠するなどの措置を講ずる。屋外の場合は、防護フェンスも設置する。

受水槽の構造

2槽式が多く、2つの槽は連通管によって繋がっており、通常は仕切弁は開放して水位は同じになっている。
清掃時には断水を避けるため、連通管の仕切弁を閉めて、1槽ずつ水を抜いて清掃を行う。
大容量の受水槽の場合は、槽内に迂回路(迂回壁)を設置して滞留水の発生を防止する。
天井、底部には1/100以上の勾配をつける。

マンホール

直径60cm以上とし、周囲から10cm以上立ち上げて設ける。
防水型で密閉性があり、施錠ができるものとする。

通気口

有効容量2m3以上の受水槽には、水槽本体との取付部に通気口を設ける。
開口部の高さは受水槽上面から10cm以上とし、防虫網をつける。

給水管

受水槽内の流入口(給水管の位置)と、流出口(給水ポンプの吸い込みの位置)は、死に水のできないよう対角線の位置に設ける。
流入管吐水部の設置高さが、定水位面下に水没する位置にすると逆流のおそれがあるため、水没させずに吐水口空間を確保する。
オーバーフロー管と給水管との間に、吐水口空間を確保する。
流入管からの吐水による水面の波立ちで、液面制御へ支障がないように、防波板を設置する。
フレキシブル継手で接続して地震での損傷を防ぐ。

オーバーフロー管

排水口空間を確保し、間接排水とし、その開口端には防虫網をつける。
オーバフロー水を受ける排水管の管径は、オーバフロー管より大きくする。
排水口空間は最小150mmとする。

水抜管

保守点検を容易に行うために設置する。
水を完全に排除するため、受水槽の最底部に設置する。
排水口空間を確保し、間接排水とし、排水管に接続してはならない。
水抜き管は、オーバフロー管に接続せずに単独の配管とする。
常時開放しているものではないので、防虫網は必要ない。

電極棒

電極に液体が接触し、コモン(アース)と、そこに流れる電流によって液体の水位を検出する。
揚水ポンプの空転防止用、パイロット電磁弁式の定水位弁を制御するための液面スイッチとして使用する。
電極として下の位置から、コモン・ポンプ空転防止(渇水)・減水警報・給水開始・給水停止・満水警報がある。
高置水槽方式の揚水ポンプ発停用ではない。

揚水ポンプ

受水槽の水を高置水槽に揚げるポンプ。
高置水槽の水位で発停する。
空転防止は、受水槽水位がポンプ用モータ運転可能範囲レベルより下がった場合に、強制停止させるものである。

定水位弁(FM弁)

受水槽の水位調節はボールタップ定水位弁で行う。
定水位弁は、主管に付いている主弁と、主管より細いパイロット管についている副弁により構成される。副弁の開閉と連動して、主管の弁体を開閉させる機構になっている。
弁を急閉止するとウォーターハンマが発生しやすい。管径が大きくなる受水槽の給水では、急閉止を避けるため定水位弁を使用している。
副弁の開閉を行う方式として、ボールタップ式と電磁弁式がある。

ボールタップ式

水位が下がりボールタップで副弁が開くと、B室よりもA室の圧力が下がる。
B室の圧力によってピストンが押し上げられ、C室を通って本管から給水される。同時にパイロット管からも給水される。
水位が上昇しボールタップで副弁が閉止すると、A室とB室の圧力は均衡する。
容積差によってA室の圧力が上がり、ピストンが徐々に下降して本管も止水される。

パイロット電磁弁式

フロートレス液面リレーの電極で水位を検出し、パイロット管の電磁弁(副弁)を開閉させることで、主弁を開閉して水位制御を行う。
電磁弁が故障し異常水位になると、安全装置としてのボールタップがパイロット管を閉止し、主弁を閉止させる。

高置水槽

容量

高置水槽の有効容量は、一般に1日最大使用水量の1/10とする。

設置位置

小便器、大便器洗浄弁の必要水圧は70kPa以上なので、高置水槽との垂直距離は最低でも7m以上必要である。

電極棒

揚水ポンプの発停用の電極棒。
電極として下の位置から、コモン・減水警報・ポンプ起動(給水開始)・ポンプ停止(給水停止)・満水警報がある。

シスターン

補給水を貯めておく水槽のこと。以下のような種類がある。

  • 水洗トイレの便器の洗浄水を溜めておくタンク。
  • 太陽光発電システムなどで温水を作るパネルへの補給水を貯めておくタンク。
  • 水圧不足を補いながら水道水を暖房装置や給湯器へ送る給水器。


Ver.1.2.5

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