給水設備の点検
簡易専用水道、小規模貯水槽水道で5m3を超えるもの、学校・病院・社会福祉施設の給水設備について必要である。
給水配管の点検
飲料水系統配管においては、管の損傷、錆(さび)、腐食及び水漏れの有無を定期に点検することが重要である。
管洗浄の終了後、給水を開始しようとするときは、色度、濁度、臭気、味、残留塩素の含有率を検査する。
給水ポンプの点検
給水ポンプの保守管理として、運転時の吸込み側及び吐出し側の圧力や、電流値等を運転日誌に記録する。
給水ポンプの電流値が変動している場合は、異物のかみ込みのおそれがある。
給水ポンプの吐出側の圧力が変動している場合は、ポンプ内あるいは吐出配管に詰まりがある。
飲料水水質測定
直結給水方式以外の場合で、最も濃度が低いと考えられる給水系統(水槽の場合は水槽の系統別)の末端給水栓にて行う。
建築物環境衛生管理基準(建築物衛生法)の水質基準を満たす必要がある。
残留塩素測定
残留塩素は、水中に存在する遊離型及び結合型の有効塩素をいい、消毒効果の指標として用いられる。
残留塩素が規定濃度に達しない場合は、塩素添加装置を設置して、その適正な管理を行う。
残留塩素が不検出、又はその濃度変動が激しい場合には、一度吐水された水が、給水管へ逆流している可能性がある。
残留塩素の測定法
残留塩素の測定には、発色試薬を使用したDPD法という簡易測定法やOT法があるが、DPD法により行う。
OT法は試薬のオルトトリジンが発ガン性物質のため、現在は使用していない。
一般的に計測しているのは遊離残留塩素であり、DPD法では、遊離型残留塩素の方が結合型残留塩素よりも先に発色する。
DPD試薬は、残留塩素と反応し、桃赤色のセミキノン中間体を生成する。発色にはpHを中性に保つリン酸塩が必要である。
DPD法による簡易測定器には、ブロック型、スライド型、ダイアル型等がある。
有害物質
蒸発残留物
水中に浮遊したり溶解して含まれるものを、蒸発による再結晶で残りかすとして得られた物をいう。
蒸発残留物の主な成分は、カルシウム、マグネシウム、シリカ、ナトリウム、カリウムなどの塩類や有機物である。
水道水質基準では、蒸発残留物500mg/L以下、硬度(カルシウム・マグネシウム)300mg/L以下と定められている。
トリハロメタン
水道水の消毒のために用いる塩素と、水道水中のわずかな有機物が反応してできる消毒副生成物質。
水温の上昇によって、その生成量が増加する傾向にある。
上質水供給設備には、トリハロメタンなどの有害物質を取り除くことや、ミネラル成分の調整を行うことがある。
受水槽の点検と清掃
受水槽の点検
飲料用貯水槽の自主点検は、1カ月に1回程度、定期に行う。
地震などで受水槽の構造や水質に影響を与えるような事態が発生した場合には、速やかにその影響を点検する。
受水槽の水位制御の作動点検は、槽内のボールタップを手動で操作を行う。
定水位弁・電極棒等の受水槽の付属装置の動作不良により、断水・溢水(いっすい)事故を起こすことがある。
受水槽の清掃
簡易専用水道の設置者は、水槽の清掃を1年以内ごとに1回、定期に行う。
水槽の清掃は、原則として同じ日に行い、先に受水槽を清掃した後に高置水槽・圧力水槽の清掃を行う。
毎月の点検や水質検査、清掃時の点検事項を、毎年12月に「飲料水貯水槽等維持管理状況報告書」にまとめて保健所に提出する。
清掃では、貯水槽内の沈殿物質及び浮遊物質を除去する。
清掃時は、貯水槽のマンホールの蓋を開け、換気用のファンやダクトを設置し、槽内の換気を図るなどの事故防止対策を行う。
清掃後は、有効塩素濃度50~100mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム溶液などの塩素剤を用いて、2回以上消毒を行う。
消毒後は、塩素剤を完全に除去し、貯水槽内に立ち入らない。消毒後は、30分以上経過してから水洗いと水張りを行う。
貯水槽の水張り終了後の点検項目は、色度が5度以下、濁度が2度以下、臭気や味に異常がないこと、結合残留塩素が1.5mg/L以上、遊離残留塩素が0.2mg/L以上あることである。(有機物の項目はない)
清掃によって生じた汚泥等の廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、下水道法等の規定に基づき、適切に処理する。
清掃作業者
清掃の作業者は、6カ月に1回程度、健康診断を受け、1年に1回研修を受ける。
水質の異常
着色障害
着色障害は、給水配管材料の腐食などによる生成物が水に含まれ生じる現象である。
赤水
水道管に鉄管が用いられている場合に起こり、金属表面にできた赤錆(酸化第二鉄)が水中に溶け出し、水を赤く染める現象である。
ほとんどの場合はしばらく流し続けることで透明な水になる。
赤水の現象を起こさないため、近年の水道管には鉄製ではない金属管やプラスチック管、鉄製の管の内部をプラスチックでコーティングした複合管(塩ビライニング鋼管など)が使われるケースが多い。
白水
亜鉛が溶けだしていることによって生じる。
青水
銅イオンが溶けだしていることによって生じる。
防錆剤の使用
給水栓から採取した水の鉄分が0.3mg/Lを超える場合は、配管の布設替えが行われるまでの応急処置として、防錆剤を使用することができる。
防錆剤を使用する場合は、定常時においては2カ月以内ごとに1回、防錆剤の濃度を検査しなければならない。
防錆剤の注入及び管理に関する業務は、防錆剤管理責任者が行わなければならない。
防錆剤管理責任者は、建築物環境衛生管理技術者又は防錆剤管理責任者講習会を修了した者が該当する。
その他の水の異常
異臭・味
藻類や放線菌が産生する臭気物質によって生じる。
スケール
水に含まれる硬質成分の炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、シリカなどの無機塩類化合物が設備などに付着したもの。
非常に硬く水に溶けにくいため、いったん固着してしまうと除去するのは困難で、配管の詰まりの原因となる。
スラッジ
排水・下水の流れる槽の底部に溜まる汚泥やヘドロのこと。(汚泥)
スカム
排水槽で槽の表面に浮上した固形物が集まったもの。(油脂)
スライム
細菌類が繁殖して出す粘液性物質。
スライムで形成された膜をバイオフィルムという。
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