トラップの機能
排水管の一部をU字に曲げ、その部分に水を溜めて(封水)、排水管内の臭気や衛生害虫などが室内へ侵入を防ぐ。(圧力変動は防止するものではない)
排水の流下水勢によって、封水部に沈積又は付着するおそれのある夾雑物(きょうざつぶつ)を押し流す自浄作用がある。
内部に間仕切りや可動部分は無い。
蛇腹管をループ状にしたものをトラップとは認められない。
トラップの種類
トラップは、サイホン作用の有無で、サイホントラップと非サイホントラップに分類できる。
便器などの陶器の水受け容器と一体となったものを、つくり付けトラップと呼ぶ。
サイホントラップ
排水管内を排水が満水状態で流れるトラップで、管の形状によりP、S、Uトラップなどがある。
管トラップは、サイホン作用によって封水損失を起こしやすい。
Pトラップ
壁排水で最も多く用いられる。Sトラップよりサイホン作用を起こしにくい。
Sトラップ
自己サイホン作用を起こしやすい。Pトラップに比べて封水強度が小さい。
Uトラップ
排水横管の屋外本管に接続する末端に設ける。

非サイホントラップ
トラップ内部の排水があふれ出ることによって流れるトラップで、ドラムトラップやわんトラップなどがある。
サイホン作用が起きにくい。
ドラムトラップ
幅広いドラム型の容器に封水をためる形。
実験排水や厨房流しなど固形物が排出される箇所に使用される。
ベルトラップ(わんトラップ)
封水部をお椀でふたをした形。
床排水に使用される。
ボトルトラップ(隔壁トラップ)
Pトラップの形状の壁排水で、封水部分が隔壁により構成されている。 脚断面積比が大きく破封しにくい。

トラップの構造
サイホン作用
サイホンの原理
2つの水槽間を管でつないだときに、管の中が水で満たされると、2つの水槽の水位が同じになろうと一方に吸引される現象。
送り元と送り先が水面が異なっていると、同じ水位になろうとして水が管を逆流したりする。
2つの水槽の水面への大気圧(これはほぼ等しい)と、両側の水槽へ落ちる管内の水の量の重力のバランスによって、管内の水が移動する。
自己サイホン作用
自己の器具で大量の水を流すと、排水管内が水で満たされ、サイホンの原理によって圧力変動が起き、器具側のトラップの封水が吸引されて一緒に吐き出されてしまう現象。
サイホン式大便器は、自己サイホン作用を利用している。
誘導サイホン作用
他の器具の排水で圧力変動が起き、負圧によって排水管側に封水が吸引される現象。
逆サイホン作用
給水管内に生じた負圧により、水受け容器にいったん吐水された水が、給水管内に逆流する現象。
「給水と排水の設備」「逆サイホン作用」参照。
トラップの指標
封水強度
封水強度とは、排水管内に正圧または負圧が生じたときのトラップの封水保持能力をいう。
脚断面積比(流出脚断面積/流入脚断面積)が大きいほど、管が水で満たされにくいので、自己サイホン作用を起こしにくく、封水強度は大きくなる。
封水深
くびれの上側(ディップ)から流出口の水面(ウェア)までの垂直距離。
ディップより水面が低下すると有効封水深が無くなることを意味する。
排水トラップの深さ(封水深)は、50mm以上、100mm以下とする。
但し阻集器を兼ねるものは、下限値を50mmとし、上限値を定めない。
グリース阻集器は100mm以上である。

あふれ縁
衛生器具又はその他の水使用機器の上縁において、水があふれ出る部分の最下端をいう。
封水損失の防止
封水損失を防ぐには、圧力変化によるサイホン作用を防止するため、通気管を設けたり、使用しない床排水口は栓をする。
毛細管現象で水が吸い上げられるのを防止するため、毛髪や糸くずなどを除去する。
トラップにかかる圧力変動の周期と、封水の固有振動周期が近いと共振現象を起こし、封水の水の損失が大きくなる。
トラップの封水の吹き出し現象は、排水管のつまりが原因であり、トラップの構造の問題ではない。
トラップの補給水装置は、封水の蒸発による破封を防ぎ、封水の保持となる。
トラップの設置
水封部は、金属すりあわせ継手を用い、清掃口を設けてもよい。
防水床用の排水トラップは、防水層の上に浸透した水を排水管へ排出させるための、水抜き孔を設置する。
頂部通気付きトラップは使用してはいけない。
二重トラップ
二重トラップにはしない。二重トラップとは、二つのトラップの間が閉塞状態となってしまう接続状態である。
例として以下のような場合がある。
・汚水の流れの方向に直列に2個以上のトラップを設け、その間に有効な通気管がない場合。
・器具トラップを有する排水管を、トラップますのトラップ部に接続する。
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