国際単位系(SI)
国際的に使用されている単位系で、7つの定義定数を起点として基本単位が表現され、それら基本単位を用いて組立単位が導かれる。
すべてのSI単位が基礎物理定数を使用した定義となっている。7つのSI単位と使用する定義定数は以下となる。
- 時間(秒[s]):セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数。
- 長さ(メートル[m]):真空中の光の速さ。
- 質量(キログラム[kg]):プランク定数。
- 電流(アンペア[A]):電気素量。
- 温度(ケルビン[K]):ボルツマン定数。
- 物質量(モル[mol]):アボガドロ定数。
- 光度(カンデラ[cd]):周波数540×1012Hzの単色放射の視感効果度。
温度
セルシウス温度
1気圧の状態で水の氷点を0℃、沸点を100℃とし、その間を100等分したものを1℃と定義したもの。
単位はセ氏[℃]である。
絶対温度
理想気体の熱膨張を計算して、絶対温度を定めたもの。
単位はケルビン[K]である。
アルコール温度計など熱膨張で温度を計測するものは、温度によって膨張率が変わるため、不正確になる。
原子や分子が動かない状態の温度(これ以上低くならない)は、セ氏温度ではー273.15℃であり、これを0Kとしている。
絶対温度とセルシウス温度の値の関係は以下となる。
絶対温度[K]=セ氏温度[℃]+273
1Kと1℃の温度差は同じなので、温度差を求める場合はどちらも値は等しくなる。
熱
熱量・エネルギー
比熱
1kgあたりの物質の温度を1℃(1K)あげるのに必要な熱量のこと。
単位は[kJ/kg・K][kJ/kg・℃]である。
比熱の大きいものは温まりにくく、冷めにくい。
水の比熱は、4.19kJ/kg・Kである。常温常圧での比較の場合、水が最も大きい。
比熱に物質の質量をかけたものを熱容量という。
熱量
質量m[kg]の物体の温度をt[K]変化させるのに必要な熱量Qは以下となる。
$\displaystyle Q=mct \ [kJ] $
$Q$:熱量 [$kJ$]
$m$:質量 [$kg$]
$c$:比熱 [$kJ/kg・K$]
$t$:温度差 [$K$]
エンタルピー
物質の持つ全熱量(エネルギー)のこと。単位は[kJ]である。
比エンタルピーは、1kgの物質が持っている熱量で、単位は[kJ/kg]となる。
比エンタルピーhは、h=tc(t:温度、c:比熱)表されるので、熱量の計算式を比エンタルピーで表すと以下のようになる。
$\displaystyle Q=mc(t_2-t_1)=m(h_2-h_1) \ [kJ] $
$Q$:熱量 [$kJ$]
$m$:質量 [$kg$]
$h_2$:上昇後温度の比エンタルピー [$kJ/kg$]
$h_1$:上昇前温度の比エンタルピー [$kJ/kg$]
エントロピー
物質の混沌さを示す。
エントロピーが高いものは混沌さが高く自由に変化でき、低いものは変化しにくい。
蒸気のエントロピーは高く、水は低い。
物質は放っておくと混沌な状態に向かい、自発的に元に戻ることはない。(エントロピー増大の法則)
熱膨張
物質を熱すると体積が増える現象で、固体より気体の方が体積、膨張率が大きい。
温度上昇に対して体積が変化する割合を体膨張率といい、長さが変化する割合を線膨張率という。
体膨張率は線膨張率の3倍である。
膨張後の体積を求める公式は以下のようになる。
$\displaystyle V=V_0(1+βt) \ [m^3] $
$V$:体積 [$m^3$]
$V_0$:0℃の体積 [$m^3$]
$β$:体膨張率
$t$:温度差 [$℃$]
体積は、圧力が一定で温度が1℃上昇すると、1/273ずつ上昇する。(ボイル・シャルルの法則)
圧力
圧力の単位
1[Pa](パスカル)とは、1[m2]の面積あたりに1[N]の力が作用したときの圧力[N/m2]である。
昔の圧力単位として[kgf/cm2]が使われていたため、古い圧力計の表示に残っている場合がある。
1Pa=1N/m2≒0.00001kgf/cm2
1MPa≒10kgf/cm2
1hPa=100Pa(ヘクトパスカル)
圧力の表現
絶対圧力
絶対真空を0として表示する圧力。
蒸気の重要な諸性質を表示した蒸気表中の圧力は、絶対圧力で示される。
ゲージ圧力(大気基準圧)
大気圧を基準とする圧力で、ある地点の圧力を同一高さの大気圧との差圧で表す。大気圧は0[Pa]となる。
圧力計の表示圧力として使用される。
大気圧は、ほぼ0.1Mpaなので、絶対圧力=ゲージ圧力+0.1Mpaである。
大気圧0.1Mpaは、760㎜の高さの水銀柱がその底面に及ぼす圧力である。
液体
体積・質量の単位
1m3=1000L
1m3=1000kg=1t(水の場合)
1L=1kg(水の場合)
溶解度
溶解度は、ある温度で100gの溶媒に溶ける溶質[g]の最大値をいう。
固体の溶解度は、溶媒の温度が上昇すると大きくなる。
気体の溶解度は、溶媒の温度が上昇すると小さくなる。
温度の上昇で分子の動きが激しくなる。固体ではその動作が溶解を促進させるが、気体では溶解した物質を溶液から放出する方に働く。
密度・濃度
密度・濃度の単位
密度
単位体積あたりの重さで表す。[kg/m3]
比体積・非容積は密度の逆数である。[m3/kg]
空気の密度は常温で、およそ1.2kg/m3である。
体積濃度
質量/体積で表す濃度。
空気中の濃度では、[mg/m3]が一般的に使用される。
水分中の濃度では、[mg/L]が一般的に使用される。
質量パーセント濃度
(溶質の質量/溶液の質量)を百分率[%]で表す単位。
分子と分母が同じ単位となる。
水で薄めた5%の溶液とは、100mL(=100g)中に5gの量である。
parts-per表記
非常に小さい数値を表すのに使われる濃度単位。
ppm(parts per million)は、100万分の1の割合を表す。
ppb(part per billion)は、10億分の1の割合を表す。
1%=10000ppm(100%/1000000ppm)
1ppm=0.0001%
水の場合、比重が1なので、溶液中の濃度は[ppm]=[mg/L]と考えてよい。
比重
比重
比重とは、密度が最大で体積が最小となる4℃の水の密度を1として比較した値。
単位は密度と同じ。
1より小さいものは水に浮くので、氷の比重は1より小さいことになる。
蒸気比重
蒸気比重とは、空気を1として気体を比較した比重の値で、1より大きいものは空気の下に行く。
水素ガスが最も軽く、危険物4類の蒸気は1より大きい。
蒸気比重は、物質の分子量/空気の分子量(28.8g)で求められる。
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