開閉器・遮断器

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開閉器

保守点検や事故時の切り離しのため、電力会社からの受電点や構内区分点に設置する。
絶縁方法として気中形、真空形、ガス形(SF6ガス)が一般的に使用され、制御方法として手動式、自動式がある。
区分開閉器(責任分界点用)は、電力会社との責任分界点に設置されるもので、架空引込ではPAS、地中引込ではUGSが一般的に使用されている。
連系開閉器は、ループ方式の配電などで異なる配電線同土を繋ぐ場所に設置され、他回線からの電力を供給する際に閉じる。

高圧交流負荷開閉器(LBS)

高圧の負荷電流を開閉するために変圧器の一次側に設置する。
開閉器自体は、負荷電流の遮断が可能だが、短絡などの大電流は遮断できない。
過電流の遮断のために、消弧室とパワーヒューズ(PF)が三相分付いているものが一般的である。
過電流や短絡電流で一相がヒューズが溶断すると、ストライカという棒がヒューズから突き出て、残り二相も遮断する。(ストライカ引外し機能)
ヒューズが溶断したときに発生したアークが、他の相に影響を与えないように絶縁バリア(板)を持つ。

高圧カットアウト(PC)

磁器材料で作られた開閉装置の内部にヒューズを取付できる構造の単極開閉器。
容量が300kVA以下の高圧変圧器、50kVA以下の高圧進相コンデンサなどの一次側の開閉器として過負荷保護用に使用する。
低圧側の短絡事故を、高圧配電系統に波及させない過電流保護のために設置する。
内蔵されるヒューズは、始動電流や雷サージなどの短時間大電流では溶断しないものを使用する。
形状には箱形と筒形がある。

内部のヒューズ

断路器(DS)(89)

開閉器の二次側、特別高圧や高圧の遮断器の一次側に設置し、検査や修理の際に充電電路から切り離して安全に作業を行うために使用する。
負荷側のブレードと呼ばれる刃状の電路を、電源側の接触子(刃受)に接続させることで開閉を行う。
断路器の先の穴にフック棒(ジスコン棒)を引っ掛けて開閉する。
電流の遮断機能(アークの消弧装置)は無いので、負荷電流が流れている状態で開閉してはならない。
断路器で回路を開く前に、まず遮断器で負荷電流を切る必要がある。
母線の充電電流など小さい電流を開閉することは可能である。負荷電流や地絡電流はできない。
誤操作防止の為、遮断器とインターロック機能を設ける。

      フック棒

3PEDS(3極断路器)

各相ごとに個別に開閉させることが可能な断路器。

遮断器(CB)(52)

負荷電流の開閉および、回路の短絡や地絡事故発生時に、迅速かつ安全に回路を遮断する。
引外し信号を保護継電器からもらい、回路保護の遮断を行う。
開放時のアーク放電の消弧方法によって種類が分かれる。
遮断器の定格遮断電流とは、遮断器が正常に遮断できる限度の電流値である。従って遮断したい電流値よりも下の定格遮断電流を持つ遮断器を選定すると、正常に動作しないことになる。

非限流遮断と遮断時間

遮断器の非限流遮断とは、短絡を検知した時に、電流の波形が0になる時点で遮断することである。
遮断器の遮断時間は、開極にかかる時間+アークが無くなるまでの時間(電圧0)となるが、交流の場合0ボルトになるまでの時間が周波数によって異なるため、時間ではなくサイクル(1/周波数(秒))で表す。
50Hzの交流で遮断時間が3サイクルの場合、3/50秒=0.06秒となる。

真空遮断器(VCB)

真空の絶縁耐力と、電極のアークによる金属蒸気を、真空によって拡散し消弧する。
22kV以下の高圧で使用する。
防火や保守性の点から、油遮断器に代わって用いられている。
電極部は真空容器(真空バルブ)に収められる。開閉動作でも真空に保つためにベローズが付いている。
遮断時のサージ電圧が高いので機器の保護の目的で、コンデンサや避雷器、サージアブソーバを前後に設置する場合が多い。
小形軽量で電極の寿命が長く、保守も容易である。密閉されるので、騒音は小さい。
高圧真空遮断器の場合、周波数を基準として遮断時間が設定されており、通常は3サイクル(50Hz:0.06s、60Hz:0.05s)や5サイクル(50Hz:0.1s、60Hz:0.083s)で事故電流を遮断する。

油遮断器(OCB)

油の消弧作用と、アークが油を分解して発生する水素ガスの冷却作用を利用する。
メンテナンスが煩雑で防火性の点から、真空遮断器に置き換わっている。

ガス遮断器(GCB)

絶縁耐力、熱伝導が高いSF6ガスを吹き付けて消弧し冷却する。
22kV超えの特別高圧で使用する。

磁気遮断器(MBB)

開閉を大気中で行う気中遮断器で、遮断時のアーク電流でコイルにより磁界を発生させ、フレミングの左手の法則でアークをアークシュート(消弧板)に押し込んで分断する。
低圧で使用する。

電力ヒューズ(PF)・限流ヒューズ

高圧回路および機器の短絡保護用として、事故時の短絡遮断用に用いられるヒューズ。
用途によって、T(変圧器用)、M(電動機用)、C(コンデンサ用)、G(一般用)がある。
磁器製の絶縁筒内にヒューズと、アークを消弧するけい砂を収納したもの。
過電流の検出と遮断の役目を一つで実現できるため設置が簡単だが、動作時間などの調整ができず、再使用ができない、
限流遮断(短絡電流の波形が最大値になる前の半波以内での遮断)が可能である。

限流ヒューズ(高圧用)
限流ヒューズ(低圧用)

配線用遮断器(MCCB)

低圧配電用で、設備の末端部分での過電流保護に使用する。一般的にブレーカーと呼ばれる。
遮断器、アークシュートで構成され、設定値以上の過電流で遮断開放機能がついている。

  • 過負荷遮断:定格を超えた電流が流れた時、電線が危険な温度になる前に電路を遮断する。(時延動作)
  • 短絡遮断:異常に大きい電流が流れた時、瞬間的に電路を遮断する。(瞬時動作)

配線用遮断器の規格

例:MCCB 2P1E 50/20

極数(P)・素子数(E)

P:接続出来る極数。(Pole)
E:過電流を検出する素子数。(Element)

  • 3P3E:極数3、素子数3、3相3線式(電圧線の本数=素子数=3)
  • 3P2E:極数3、素子数2、単相3線式200V(電圧線の本数=素子数=2)、電柱から家庭に電力供給するラインの遮断器。
  • 2P2E:極致2、素子数2、単相2線式200V(電圧線の本数=素子数=2)、家庭用エアコンの遮断器など。
  • 2P1E:極数2、素子数1、単相2線式100V(電圧線の本数=素子数=1)、家庭用の遮断器など。
  • 1P1E:極数1、素子数1、単相2線式100V(電圧線の本数=素子数=1)、家庭用の遮断器など。

過電流引き外し素子がない極には識別の”N”のマークを表示している。
中性線に過電流引き外し素子は無くてもいいとの内線規定がある。
2P1Eの遮断器は、単3回路の分岐110V回路に使用し、Nマークの極は中性線(接地線)側に接続する。
2P2Eの遮断器は、単3回路の分岐220V回路と110V回路とのどちらに使用されても問題ない。

電流値

50/20:AF=50A、AT=20A
AF(アンペアフレーム):ブレーカーが耐えられる電流値。
AT(アンペアトリップ):ブレーカーがトリップする電流値。
AT値は、流れる電流値×1.2~1.5倍程に設定する。
AFの選定方法は、1ランク上のAFを選定する。15AT以下なら30AFを選定する。

配線用遮断器とヒューズの動作特性

実際の電流値とトリップする動作時間の関係は、各メーカーの配線用遮断器の動作特性図を参照する。
法律上の規定(電技解釈第33条)は以下となる。
配線用遮断器:定格電流の1倍の電流で自動的に動作しないこと。
低圧ヒューズ:定格電流の1.1倍の電流に耐えること。

   配線用遮断器の動作特性
    ヒューズの動作特性

漏電遮断器(ELCB)

組み込まれた零相変流器によって、漏電による漏れ電流を検出して回路を自動的に遮断する機能をもつ遮断器。
地絡による感電を防止する目的で回路に設けられる。殆どの製品では過電流遮断機能も付いている。
内線規程による感電保護では、高感度形・高速形を使用し、感度設定は30mAで0.1秒である。
(水気のある場所以外で接地工事の省略をした場合は、15mAで0.1秒とする。電技解釈第29条)
漏電でトリップした場合、「漏電表示ボタン」が飛び出して表示する。レバーがON/OFFの中間位置で止まるものが多い。
3Pの漏電遮断器を単相2線で使用する場合は、真ん中は使用しない。(漏電検出の制御電源を両端極から取っているため)
ブレーカーのON/OFF状態や、トリップしたことを通知する補助接点付きのものもある。

サーキットプロテクタ

機器保護用遮断器で、細かな定格電流と様々な遮断特性が用意されている超小形遮断器。
配線用遮断器は配線保護が主目的で、サーキットプロテクタは機器の保護を目的とする。

ニュートラルスイッチ

分電盤内で、単相100V回路の1Pブレーカに非接地側を接続し、接地側(中性相)に接続するスイッチ。
分電盤のレイアウトの簡素化、ブレーカの費用を節約する目的で使用される。
最近は使用されなくなった。
ニュートラルスイッチは負荷電流を遮断する機能は無いので、1Pブレーカを先に開放する。
ニュートラルスイッチは、すべての回路で接地線を共有しているので、絶縁抵抗測定時は、主幹ブレーカーを切り、1Pの分岐ブレーカーと、ニュートラルスイッチをすべて開放して計測する。(すべて開放しないと別ルートで閉回路が構成されてしまい正しい測定ができない)

電磁開閉器(電磁接触器)

電磁開閉器

負荷電流を開閉する電磁接触器にサーマルリレーと呼ばれる過電流保護機器を組み込んだもの。

  電磁開閉器

電磁接触器

コイルの電磁力によって接点を開閉する装置。
動作としては、電磁接触器の電磁コイル端子(A1ーA2)に電流が流れると、磁力によって主接点と補助接点が同時に動く。
主接点の3線(L1ーT1、L2ーT2、L3ーT3)が閉じる。
補助接点(13ー14)がa接点なら閉、b接点なら開となる。(a接点、b接点を両方持つものもある)

  • 瞬時励磁式(ラッチ式):コイルを励磁して投入した後、機械的にその状態を保持するもの。開路時は、引外しコイルを励磁して機械的保持機構を外す。開閉頻度が少なく、停電時や操作回路故障時でも停止できないような負荷に用いる。
  • 常時励磁式:コイルが励磁されている間だけ投入状態を維持し、コイルの励磁が解けると開路状態になるもの。電動機など開閉頻度の多い負荷に用いる。

サーマルリレー(熱動継電器)

電流によって生ずる熱をバイメタルに加え、その膨張係数の差によって湾曲する作用で、接点の開閉を行うリレー。
電流値ダイヤルで設定された値を超えると、バイメタルによってa接点(97ー98)、b接点(95ー96)が動作し、トリップボタンが引っ込む。(トリップ状態は表示窓で表示するものもある)
リセットボタンを押すまで、状態は保持され、元に戻らない。
b接点を電磁接触器のコイル端子に接続しておけば、過電流時に電磁接触器の主接点を開放することができる。

高圧真空電磁接触器(VMC)

高圧側のコンデンサ、変圧器、電動機などの負荷の開閉制御を主目的とした多頻度開閉可能な開閉器。
負荷電流の開閉回数の耐久性は非常に高いが、遮断器のように短絡電流の遮断能力はない。
高圧限流ヒューズと組み合わせて、短絡保護を可能としたコンビネーション形もある。
通常は自動力率調整装置と組み合わせて、コンデンサ回路を自動開閉する場合に使用される。

双投形電磁接触器(MCDT)

商用、非常用などの2系統の電源に接続し、電源を切り替える機器。
一般的には商用電源から電気を供給し、停電時には非常電源(発電機電源など)側に切り替える回路に使用される。

開閉器・遮断器の保守

開閉器(遮断器)の開閉部分は、接触面の酸化や緩みによって接触抵抗が増加する。
接触抵抗の増加は、電流の増加(過電流)や、ジュール熱による焼損を引き起こす。
接触抵抗の増加の点検は、ケースに触れたり、放射温度計を使用して発熱を見たり、接点間の電圧降下(mV)を計測して他の相と比べて大きくないかをチェックする。
(活線状態での点検なので注意が必要である)


Ver1.0.4

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