給湯設備

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給湯量と温度

給湯量

  • 病院100~200L/(床・日)程度
  • ホテル、集合住宅75~150L/(人・日)程度
  • 事務所10L/(人・日)程度

温度

  • 厨房の皿洗い機のすすぎ温度80℃程度
  • 壁掛けシャワーの使用温度、幼児や高齢者使用42℃程度
  • 屋内プール:25~28℃

水の特徴と給湯

4℃(最も密度が大きい)以上の水は、温度が高くなると密度は小さくなる。(比体積が大きくなる)
1℃温度が上がるごとに1/273ずつ体積が増加する。(シャルルの法則)
水中における空気の溶解度は、水温の上昇により減少する。(温度が上がると水中の分子の運動が活発になり、気体分子が飛び出しやすくなる)
水中に溶存している空気は、圧力が高いと分離されにくい。(ヘンリーの法則)
給湯設備で扱う範囲の水は、ほとんど非圧縮性である。(流速が小さいので、圧力や温度による密度の変化が無視できる)

給湯方式

給湯循環の方式

自然循環方式

動力を使わずに、湯が水よりも比重が軽いという性質を活かして自然に循環させる方式。
配管形状が複雑な中央式給湯設備には適さない。

強制循環方式

循環ポンプを設置して、強制的に管内の湯を循環させる方式。

加熱場所での分類

局所給湯方式

湯を使用する場所の近くに加熱装置を設けて給湯する方式。
加熱装置から給湯箇所まで一管式(単管式)により配管される。
電気湯沸かし器、ガス湯沸かし器など。

中央給湯方式

機械室に大型の加熱装置を設け、湯を使用する場所へ給湯する方式。
給湯水を均等に循環させるため、返湯管に流量調整の弁を設ける。
給湯箇所の多い病院やホテルで採用される。
給湯温度が60℃になるように調整し、レジオネラの発生を防ぐため、ピーク使用時においても55℃以上を確保する。
レジオネラ属菌汚染防止のためには、中央式よりも局所式にした方がよい。

給湯配管の方式

ダイレクトリターン方式

往き管はポンプから順に各機器へ接続し、還り管はポンプから遠い機器から順に配管する方式。
ポンプと機器の距離と、還り管の長さは比例する。
ポンプから遠い機器ほど、圧力や水量が低下する。

リバースリターン方式

往き管はポンプから順に各機器へ接続し、還り管はポンプから近い機器から順に遠い機器へ配管する方式。
冷温水配管(空調用)において、ダイレクトリターン方式の欠点(圧力差の発生)を改善するために取られる方式である。
ポンプと機器の距離と、還り管の長さは反比例する。配管は複雑になる。
機器毎の往き管+還り管の長さは等しくなるので圧力は均等になる。
給湯配管では還り管は細いので、遠い機器ほど細い配管(還り管)が短いので湯が多くなり、湯を均等に循環できない

ダイレクトリターン方式
リバースリターン方式

給湯配管の構成

循環式給湯設備の下向き配管方式の横管は、空気や水が容易に抜けるように1/200以上下り勾配とする。
配管内の空気や水が容易に抜けるように、凹凸配管にはしない。凹配管となる場合は、水抜きのための止水弁を設ける。
長い直線配管には、伸縮管継手を使用して管の伸縮を吸収する。
銅管は柔らかいので潰食を防ぐため、管内流速は1.2m/s以下とする。他の配管材料を用いた場合と比較して流速が遅い
給湯管の管径は、ピーク時の湯の流量に基づき決定する。

返湯管

循環式の給湯配管のうち、加熱器または貯湯槽へ戻る管をいう。
給湯栓を開いたときにすぐに湯が出るように設けるものである。
業務用厨房など、連続的に湯を使用する場合は、返湯管は設けない。
一般に返湯管の管径は、循環流量(循環ポンプ容量)で決定し、給湯管の半分程度である。
給湯水を均等に循環させるために、返湯管に設けられている定流量弁の開度を調整する。

循環ポンプ

循環ポンプは、熱損失(温度低下)を補うために返湯管に設置する。
省エネのため、返湯管の温度が低下したときに自動運転するようにする。
循環ポンプの揚程(汲み上げ能力)は、貯湯タンクから最遠の給湯配管と返湯配管を流れる循環水量で生じる損失水頭とする。(最も大きくなる管路での抵抗による圧力損失を意味する)
ポンプが吸い上げることのできる高さは、温度が高いほど低くなる。(温度が高いと飽和蒸気圧も高くなり、キャビテーションが発生しやすくなる)
実際にポンプが吸い上げることのできる水の温度は60℃以下である。
背圧(吐きだし側の圧力)に耐えられるポンプを選定する。
循環ポンプの騒音、振動対策のサイレンサは、ポンプの吐き出し側に設置する。

循環流量の計算式

循環ポンプの流量は、熱損失量比例し、給湯温度返湯温度の差に反比例する。(循環流量が多ければ温度はあまり下がらない)
循環ポンプの選定時に使用される循環湯量の計算式は以下となる。

$\displaystyle Q=\frac{0.0143×H_L}{Δt} \ [L/min] $

$Q$:循環流量 [$L/min$]
$H_L$:循環配管からの熱損失 [$W$]
$Δt$:加熱装置における給湯温度と返湯温度との差 [$℃$]

実際のビル管試験では、問題分で計算式が与えられており、単位に注意して代入すれば解答できる。

給湯設備の安全装置

膨張水槽

温水を循環させる場合には、膨張した水の圧力を逃がす必要があるため、循環ラインに膨張タンクを設置する必要がある。
開放式と密閉式があるが、大部分は密閉式である。
密閉式は、内部が水と水と同じ圧力の気体を入れた構造になっており、水の比体積が増加すると、水槽内の気体を圧縮して湯の膨張を吸収する。
密閉式は条件によって圧力容器となり、加熱装置内の圧力が設定以上になった場合の安全弁や逃がし弁を設ける。

逃がし弁

入口側の圧力が高まることによって弁が開き、内部の液体を外に排出する。
膨張した湯を逃がすための排水管が接続されている。
圧力水槽や密閉式水槽、ポンプ方式などで用いられる。

逃がし管(膨張管)

給湯ボイラなど加熱器により膨張した配管内の水を、膨張タンクへ逃す配管。
開放型の水槽で用いられ、たきはじめの湯の膨張量を逃す。
逃がし管には、を設けてはならない。
逃がし管を設置する場合は、水を供給する高置水槽の水面より高く立ち上げる
(逃し管の位置を水槽の水面よりも低い位置にしてしまうと、水が供給されるたびに、逃し管から出てしまう)
逃がし管の管径は伝熱面積によって異なる。

空気抜き弁

配管中にたまった空気を自動的に排出する。
密閉式給湯方式では、配管中の空気を排除するため、最高部に空気抜き弁を設ける。
水中における空気の溶解度は、水温の上昇により減少するので、温度が高いところに空気抜き弁を設ける。
空気は配管内の圧力が高いと分離されにくいので、圧力の低いところに空気抜き弁を設ける。
負圧のところに設置すると空気が管内に入ってしまう。
黄銅やステンレス鋼の弁の中にフロート弁が入った構造である。

ワッシャ

器具のワッシャは、細菌の繁殖を防ぐため、天然ゴムではなく合成ゴムを使用する。

温水の製造

加熱の方式

水の加熱方式には、直接式と間接式がある。間接式は大規模建築物や排熱回収をする場合で使用される。

  • 直接式:熱源としてガスや電気、太陽熱などを利用して水を直接加熱する。
  • 間接式:蒸気や高温の温水を熱源として、加熱コイルで給湯用の水を加熱する。

温水発生機

温水発生機は、大気圧の沸点を超える温度の液体を保有しないことや、缶体に圧力がかからないなどから、ボイラーには該当しない。

真空式温水発生機

貯湯槽が無く、減圧蒸気室で缶体内を大気圧より低く(真空)にして、熱媒水を80℃程度で沸騰させ、その蒸気で水管を温めてお湯を作る。
中小規模建築物などの給湯や暖房用として使用される。
大気圧より低いので、定期検査取扱資格は、労働安全衛生法に規定されていない。

無圧式温水発生機

缶体が開放されていて大気圧と同じで、温めた熱媒水を熱交換器に送り、熱交換器の水を温めてお湯を作る。
大気圧と同じなので、定期検査や取扱資格は、労働安全衛生法に規定されていない。

ヒートポンプ給湯機

ヒートポンプは、排熱回収用の給湯熱源機器として使用される。

直焚吸収冷温水機(ナチュラルチラー)

「吸収冷凍機」「吸収冷温水機」参照。

自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュート)

自然冷媒(CO2)を使用し、ヒートポンプのサイクルを利用して温水を作る。
湯の最高沸き上げ温度は90℃程度である。

給湯用ボイラー

給湯用貫流ボイラー

温水を取り出す小型ボイラーで、水管群により構成され耐圧性に優れている。
貫流ボイラーなので缶水量が少なく、出湯量の変化により出湯温度が変動しやすい。(シャワーなどには適さない)

貯湯槽

貯湯槽は、タンク内が湯で満たされている密閉式と、上に空間がある開放式がある。
貯湯槽の容量は、ピーク時の必要容量の1~2時間分を目安に加熱能力とのバランスから決定する。
貯湯槽の容量が小さいと、加熱装置の発停回数は多くなる
給湯を停止できない施設では、貯湯槽の台数分割が必要になる。
レジオネラ属菌の発生を防止するために、貯湯槽の貯湯温度は常時60℃以上とし、ピーク使用時においても55℃を確保する。
定期的に底部の滞留水の排出を行う。
貯湯槽の安全装置として、逃し管の代わりに逃し弁を設けてもよい。

加熱コイル付貯湯槽

貯湯槽に加熱用の熱交換器(加熱コイル)を組み込んだもので、蒸気や高温の温水などの熱媒が得られる場合に使用される。
ホテルや病院で多用されている。
第一種圧力容器に該当する。

電気温水器

加熱能力と貯湯容量を有している加熱装置である。
貯湯量は、60~480L程度である。

貯蔵式湯沸器

貯蔵式湯沸器は、貯蔵部が大気に開放された開放型貯湯槽を使用する。
90℃以上の高温湯が得られ、飲用として利用される。

太陽熱利用温水器

ソーラーパネルの集熱器で太陽光を熱源として水を温める。
集熱器貯湯槽が一体で構成され、水が集熱器と貯湯槽との間を対流により自然循環するものを自然循環式という。



Ver.1.2.1

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