給排水の管理
給排水設備には、水や湯を供給する系統、使用した水や廃棄物を排出する系統があり、給水と給湯の圧力バランスや、供給系と排出系の水量バランスが重要である。
飲料水、雑用水、排水は混合しないように分けて管理しなければならない。
飲料水・雑用水・排水の区別
飲料水用配管は、他の配管系統と識別できるようにしなければならない。
雑用水の配管は、上水管と異なる色で塗装し、管種を変えることが望ましい。洗面器、手洗器等の誤飲・誤用のおそれのある器具に連結しない。
雑用水の水栓には、雑用水であることを示す飲用禁止の表示・ステッカー等を掲示する。
竣工時に、雑用水を着色して通水試験を行い、上水の器具に着色水が出ないことを確認する。
給水管と排水管を平行して上下に並べる場合には、給水管は排水管の上方に埋設し、両配管の水平間隔を500mm以上とする。
上水管、雑用水管、給湯管等が並行して配管される場合、配管の配列を変えてはならない。
クロスコネクション
飲料水系統と他の配管系統を配管などで直接接続すること。
逆止弁を付けたとしても完全に防げないので、上水系統とそれ以外の系統は直接接続してはならない。
吐水口空間
水受け容器の水があふれる上縁と、給水口の高さとの距離。
飲料系統の給水では、水が逆流するおそれのある場所においては、吐水口空間を確保する必要がある。
管内の現象
ウォータハンマ(水撃作用)
水が急閉止したときに、閉止部の上流の圧力が上昇し、圧力波が管内に伝わる現象。
弁の急速な閉鎖だけでなく、急速な開放によっても生じる場合がある。
配管・機器の振動、衝撃音の発生、配管の破損の原因になる。
水の圧縮性が低いことも要因である。
蒸気によるウォーターハンマ(スチームハンマ)は、配管内の蒸気が凝縮水(ドレン)となり、その塊が衝突するものである。
発生条件
- シングルレバー水栓・電磁弁などの急閉鎖型の弁が用いられている場合。
- 配管内の圧力や流速が大きい場合。
- 配管が長い場合や曲折が多い場合。
- 配管内に逆流や空気だまりが発生している場合。
- 揚水ポンプの急停止により、水柱分離が発生する場合。
防止策
- エアチャンバ(一時的に空気をためておく空間)を設置する。
- ウォータハンマ防止器(衝撃吸収器)を発生点に近接して設置する。
- 揚水ポンプと高置水槽が平面的に離れている場合は、揚水管を静水圧の高い低い位置で横引きするとよい。
- 揚水ポンプの急停止による場合は、緩閉式逆止め弁をポンプの吐出し側に設置する。
- 蒸気配管でのスチームハンマには、蒸気トラップ(溜まった凝縮水や空気を排出する自動弁)を設置する。
キャビテーション
ポンプ吐出量の減少によって圧力低下が起こると、水の一部が気化して水蒸気となって気泡を作り、配管などに衝撃を与えること。
液体の圧力が飽和蒸気圧以下に低下すると発生する。
騒音・振動が発生し、吐出量が低下する場合もある。
防止するには、常に有効吸込みヘッドが、必要有効吸込みヘッドより大きいことが必要である。
- 有効吸込みヘッド:吸込口の液体が持つエネルギーから、飽和蒸気圧のエネルギーを引いたもの。(飽和蒸気圧に対してどれだけ余裕があるかを表す)
- 必要有効吸込みヘッド:ポンプが液を吸い込むために必要なエネルギー。(ポンプ固有の値)
水柱分離
揚水ポンプを停止して流れを急に止めた場合に、慣性力で進み続けようとする水流にポンプから供給される水流が追い付かず、圧力が急激に低下して蒸発によって、水流が途切れる現象。
水が無くなった部分に、両側から水が流れ込んで衝突するとウォーターハンマが発生する。
高置水槽に揚水する配管で、屋上部分での横引き配管が長くなると発生しやすくなる。
逆サイホン作用
給水管内に生じた負圧により、水受け容器にいったん吐水された水が給水管内に逆流すること。
防止するには吐出口空間(排水口空間ではない)の確保をする。
構造上できない大便器洗浄弁などには、バキュームブレーカ(吸気弁)を設置する。
管の腐食・劣化
腐食
腐食速度の単位は、 [mm/年]である。
潰食(かいしょく)
表面に局部的にU字状に発生する腐食。
流速が速すぎると発生する。
孔食(こうしょく)
表面に局部的に孔状に発生する腐食。
流速が遅すぎると発生する。
銅管やステンレス鋼管内の異物の付着が原因となる。
異物などを起点に、局所的に不動態皮膜が破壊され、その部分がアノード、他の部分がカソードとなって局部電池を形成して腐食が進んでいく。
溶解腐食
金属の電気化学作用によって発生する腐食。
応力腐食
応力が加わった状態が持続すると、やがて金属に割れが生じる現象。
金属材料の曲げ加工を行った場合には、応力腐食の原因になる。
隙間腐食
接合部の隙間など、液が停滞しているところで腐食が孔食状に進行する現象。
隙間の内部では、不動態化に必要な酸素が不足して不動態皮膜が破壊され、酸素濃度の低い方がアノード、高い方がカソードとなり、局部電池を形成して腐食が進んでいく。
クリープ劣化
物体に長時間継続する熱応力を加えることで、時間とともに物体が変形していく現象。
合成樹脂管などで発生する。
金属の不動態化
表面の金属分が酸素と結合して酸化することによって、酸化保護被膜が生じた状態のこと。
酸化保護被膜は、腐食からの保護作用がある。
金属の溶解腐食と防食
ほとんどの金属の腐食は、電気化学作用によって発生する。
金属の腐食とは、主に金属が酸化されることを指す。
溶解腐食
金属は電解質中で固有の電位を持っているため、水中などの異種間金属の接合部で電池作用が起きる。
腐食電池回路は、電位の低い金属がアノード(ー)、電位が高い金属がカソード(+)となり、水中が電池となる回路が形成される。
アノードとは、電池回路の電流が水中に流出する部分である。(金属から電流が流入する部分)
腐食電池回路では、アノードが酸化して腐食し、カソードが還元され防食される。
異種金属の配管を接続すると、異種金属の電位差が大きいほど腐食電流が大きくなり腐食速度が増大する。
防止するには、同じ材料にするか、電気防食を行う。
電池作用の例
炭素鋼鋼管(SGP)がー0.61V、ステンレス鋼管(SUS)がー0.08Vの場合
電位がSGP<SUSなので、SGPがアノード、SUSがカソードの電池となり、SGPが腐食する。
電気防食
電気防食とは、金属に電気を流すことで、腐食の起こらない防食電位に変化させて腐食を防ぐ工法である。
SUS444は最も優れたステンレス鋼だが、水素が発生するため、電気防食は使用できない。
流電陽極式電気防食
鋼よりもイオン化傾向の大きな(錆びやすい)金属を犠牲陽極としてを接続しておくことで、金属が錆びる要因が発生した際に優先的にそちらが錆び、鋼が守られるという仕組みで防食する。
具体的には、防錆したい金属(カソード)に対して、より電位の低い金属(アノード)を犠牲陽極として取付けることで、電池回路を形成させる。
金属体の電位差を利用するため、電源を必要としない。
犠牲陽極が消耗するため、腐食状態を調べ、取り換えが必要である。
外部電源方式電気防食
外部の直流電源から防食電流を流す方式である。
具体的には、防錆したい金属(カソード)と、補助陽極(アノード)の取付けて、補助陽極側の電極から直流電流を流す回路を形成する。
定期的な電極の取替えは必要ない。
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