ダクトの種類と役割
給気や排気などを目的として、ビル内や屋外に設置された空気を運ぶ管。
通気管とは異なる。
- OA(OutdoorAir):外気の取入れを行うルート。
- EA(ExhaustAir):外への排気を行うルート。
- SA(SuplyAir):空調機からの給気を行うルート。
- RA(ReturnAir):空調機への還気を行うルート。
- SM(Smoke):火災時の排煙を行うルート。
ダクトの形状
ダクトの形状として、丸ダクト(円形)、角ダクト(長方形)、オーバルダクト(楕円形)などがある。
丸ダクト(スパイラルダクト)
板状の鋼材をらせん状に巻いて丸形にしたもの。
高速ダクトに使われる。
スパイラルダクトは、「はぜ」により丸ダクトの強度を高めたもの。
角ダクト
四角い形状のダクト。
抵抗を増やさないため、アスペクト比(長辺/短辺)を4以下にする。(1.5~2が理想である)
収まりが良いが抵抗が多いので、低速ダクトに多く使われる。
オーバルダクト
扁平な形をしたダクト。
角ダクトと丸ダクトの中間的な特性を持つ。
フレキシブルダクト
ある程度、三次元に曲げることができる。




チャンバーボックス
ダクト径より広い面でつくった五面体や六面体の箱形状のダクトのこと。
おもにダクトの途中に設けて空気の分岐や合流を行う。

ダクトの施工
角ダクトの接続
角ダクト同士を接続する工法には、アングルフランジ工法と共板フランジ工法がある。
アングルフランジ工法
角ダクトの両端にアングルフランジを固定して、アングルフランジをボルト・ナットで固定する。
強度が優れているが、施工時間がかかり価格も高い。

共板フランジ工法
角ダクトの端を外側に折り曲げてフランジとし、四隅に専用のコーナーピース部材をはめ込み、ボルト締めして、フランジ部分を接合クリップで固定する。
施工しやすく価格も安い。

はぜ
板を接続する場合に用いる折り曲げの部分のこと。
ダクトの施工では、ボタンパンチスナップはぜ、ピッツバーグはぜなどが使用されている。


丸ダクトの接続
フランジ継手工法
スパイラルダクトにフランジとフランジカラーを差し込んで、フランジ同士をボルト・ナットで固定する。
強い強度にも対応できる。


差込継手工法
専用の差込継手(ニップル)をスパイラルダクトに差し込んで固定し、外側からダクトテープを巻いて接続する。
施工しやすく価格も安い。


ダクトの継手
- エルボ・Sカーブ:曲がり部分に使用する。
- ホッパー・レジューサー:サイズの変更に使用する。
- T管・Y管:分岐部分に使用する。
- たわみ継手(キャンバス継手):機器からダクトへの振動を遮る。
- フレキシブル継手:ダクトと吹出口などの位置調整に使用する。




ダクトの工事
ダクトの素材
一般的に亜鉛鉄板が使用される。
耐食性を必要とするダクトや厨房フードなどには、ステンレス鋼板が用いられる。
低圧の亜鉛鉄板製長方形ダクトでは、一般的に0.5~1.2mmの板厚のものが使用される。
ダクトの曲がり角度
- 角ダクト:わん曲部の内側の半径はダクト幅の半分以上とする。
- 丸ダクト:わん曲部の内側の半径はダクト直径の半分以上とする。
ダクトの拡大・縮小角度
ダクトの断面の変化は圧力損失となり、騒音の原因となる。
拡大する時、15度以下とする。
縮小する時、30度以下とする。
ダクトの支持
壁に固定支持する方法や、天井から吊り支持する方法がある。
角ダクトの吊り支持は、スラブのインサート金具に吊りボルトをねじ込んで、山形鋼などのアングルでダクトを支持する。
丸ダクトは、一点吊りの専用吊りバンドなどでダクトを支持する。
壁貫通部の施工
ダクトが壁を貫通する場合は、躯体とダクトの隙間にロックウールなどを充填して振動を躯体に伝えないようにする。
ダクトが防火区画を貫通する場合は、1.5mm以上の厚さの鉄板や鉄網モルタルで被覆した短管で防火区画を貫通させる。躯体との隙間にはロックウールなどの不燃材を充填する。
防音・防振対策
消音器(グラスウールダクト)
空調機や送風機の騒音を室内に伝わらないようにするため設置する。
内部にグラスウールなどを充填して吸音する。
低周波数より中高周波数に効果がある。


アクティブノイズコントロール(ANC)
騒音に対して同じ振幅で逆位相の音を流し、騒音を打ち消す方法。
中・低周波の音に有効である。

ダクトの振動
ダクトの振動の原因は、風速の速すぎや、鉄板の薄すぎ、吊り間隔が長すぎることがある。
ダクトの騒音の対策として、出口にたわみ継手を施工したり、整流装置(ガイドベーンなど)を設けたりする。
ダクトの流体力学
ダクトの種類
- 低圧ダクト:流速範囲15m/s以下。常用圧力範囲+490以下、ー490以内。
- 高圧1ダクト:流速範囲20m/s以下。常用圧力範囲+490超~+980以下、ー490超~ー980以下。
- 高圧2ダクト:流速範囲20m/s以下。常用圧力範囲+980超~+2450以下、ー980超~ー1960以下。
ダクトの風量
連続の式より、単位時間にダクトへ流入する空気の質量と、そのダクトから流出してくる空気の質量は、途中に漏れがなければ等しい。
ダクト中では、流体の密度ρ、流速v、断面積Sの積は一定となることを意味する。
ダクト中を進む気流の速度は、断面積に反比例する。
$\displaystyle Q=vS \ [m^3/s] $
$Q$:単位時間当たりの風量 [$m^3/s$]
$v$:平均流速 [$m/s$]
$S$:断面積 [$m^2$]
ダクトの圧力
ダクト内の全圧は、静圧(大気圧)+動圧(運動エネルギー)として扱う。
摩擦のないダクト中の理想流体の流れでは、ベルヌーイの定理が成り立つ。
動圧+静圧+位置圧=一定
$\displaystyle \frac{1}{2}ρv^2+P+ρgh= $一定
$ρ$:密度 [$kg/m^3$]
$v$:速度 [$m/s$]
$P$:静圧 [$Pa$]
$g$:重力加速度 [$m/s^{2}$]
$h$:高さ [$m$]
動圧(運動エネルギー)は、流体の密度に比例する。流速の2乗に比例する。
動圧(運動エネルギー)は、送風機からの距離にかかわらず、ダクト内では同一傾向にある。
静圧(風圧)は、距離が遠くなるほど小さくなり、吸い込み側が負圧、吹き出し側が正圧である。
空気の密度は、およそ1.2kg/m3である。
ダクトの圧力損失
ダルシー・ワイスバッハの式をダクトに適用する。
$\displaystyle Δp=λ×\frac{1}{2}ρv^2×\frac{l}{d} \ [Pa] $
$Δp$:圧力損失 [$Pa$]
$λ$:摩擦損失係数
$ρ$:空気密度 [$kg/m^3$]
$v$:流速 [$m/s$]
$l$:ダクト長 [$m$]
$d$:ダクト径 [$m$]
ダクトの圧力損失は、ダクトの長さに比例し、直径に反比例する。動圧(風速の2乗)に比例する。
ダクトの形状変化に伴う圧力損失は、形状抵抗係数(摩擦損失係数)に比例する。
流速は、風量/断面積なので、圧力損失は風量の2乗に比例する。
圧力損失は流速の2乗に比例して大きくなるので、ダクトを大きくして流速を下げれば、損失は少なくて済む。
ダクトの維持管理
空調用ダクトは、経過年数に応じて内部の清掃を考慮する。
還気ダクト内粉じん中の細菌量は、一般に給気ダクト内と比較して多い。
室内空気質の低下の原因として、ダクト内部の汚れが考えられる。
風量が減り、回転数が一定で、圧力が高い場合、ダクトの抵抗が大きすぎるのが原因である。
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